ご
フィレス視点2
自分の指示でしなくてはいけない事案を終わらせると、あとは副隊長に任せて(丸投げ)してフィレスは走り出した。
さっき彼女のいた岩場に行くと、小さな尻もち跡がある。
笑みながら周りを見回すと、すぐそばには小さな生き物を捕まえる罠が設置されていた。
それを取りながら空を仰ぐと、愛鳥が円を描くように飛んでいる。
あっちか...。
だいぶ時間がかかってしまった。
どんどんと国境に近くなっていく。
それにつれて甘い香りが濃くなっている。
ちらつき始めた雪を見上げながら、フィレスは山深く踏み込んでいった。
黙々と登り続けると、木に愛鳥が留まっていた。
日は暗くなってきていたため、見回すと明るく光ってるところがわかる。
そっと覗くと、彼女は焚き火を見つめ、ぼんやりしている。
あぁ、あそこにいる...!
穴からもれる香りが俺を酩酊させる。
会いたかった!
ひと目でも見たかった。
でも見つけたからにはもう逃せない...。
フィフスはそっと踏み込むと、驚くことに予想以上に早く気づかれた。
「...ん?
ぎゃあああああああ!!!!」
あまりの驚きっぷりに思わず吹き出してしまいそうになる。
「お嬢さん、罠を一つ忘れてますよ」
怯えられないように微笑みながら声をかける。
「こんにちは、第三騎士団を任されてる、フィレスといいます。
フィーと呼んでくださいね」
逃げ道をふさぎなから、ゆっくりと距離を詰めていく。
「お名前をうかがっても?」
すると彼女は我に返って急にキョロキョロと周りを見回す。
あぁ、残念。
我に返ってしまったな...。
「じょじょじょ冗談じゃないわよ!
ああ、あ、あんたとはもう会わないんだから、名前のやりとりも必要ないじゃない!!」
少し鼻にかかる柔らかい声。
その声で名前を呼んで。
もっと反応して、声を聞かせて欲しい。
俺から逃げるなんて許せないなぁ。
「ははは、俺はこれっきりさせないつもりだよ」
彼女の顔がすぅっと青くなる。
面白い。
反応することが嬉しい。
奥の壁際で、真っ青になってこちらを睨みつける彼女が、このあとどう動くか追ってみる。
我慢できず触れようとした瞬間、弾けるように彼女は叫んだ。
「動くなぁ!!!! フィレス!!!!!」
お、俺の名前呼んだ!
と歓喜に打ち震えると同時に、本当に動けなくなる。
うん、あ~~、縛りの呪...。
「...う~ん、最初に名前をお伝えしたのは、うかつでしたね~」
彼女は1つだけの技に、縛りの呪を持ってたか。
勝ち誇ったように彼女が睨みつける。
「ご愁傷様、いつか解けるでしょ。
あんたの魔力次第で。
忘れ物ありがとう。
さよなら、二度と会わないわ」
自信満々の顔も可愛いね。
でも残念。
そんな答え、捕まりたくなかったら教えちゃダメだよ。
俺は薄く微笑む。
魔力を放出すると、徐々に痺れたように動けなくなった体がほぐれていく。
なるほどね、いいことを聞いた。
これでいつでも対応できる。
「あなたとの関係は、これっきりにしないと言ったでしょう?」
眠りを誘う術を詠唱しながら、後ろからそっと近づき彼女の腰に腕をまわす。
「ごめんね、俺ってけっこうワガママなんだ」
夢の中でも、どうか俺と一緒にいてて。
「ちょ、規格...外...」
そうつぶやきながらレーナは深い夢の中へ落ちていった。
「次起きたときに名前教えてね。」
微笑みながらギュッと抱きしめて、匂いをかぐ。
あぁ、やべぇ!
俺、マジでヘンタイかも...。
毎度ありがとうです