なな
「さらわれた?」
ロックにおもわず聞き返す。
現在夜10時頃。
9時に1日の催しがだいたい終わり、店も閉店しだしてようやく本格的に「隊長がいない」という話しになったらしい。
ずいぶん気づくのが遅すぎるだろうと思ったけど、それだけあちらこちらてんやわんやだったし、フィレスもよく雲隠れするから特に気に止められなかったらしい。
「そーそー!
どうやら昼の催しの後、麗しのお姫様よろしく、神殿にさらわれちゃったみたいでさぁ、今から迎えに行くとこ。
いちおうここに報告しに来たんだけど、レーナちゃん行く?」
「私もいっていいの?
そ...それにそんな簡単にさらわれちゃうものなの?
たしかフィレス、なんかの条約結ぶ時も寝かされちゃってたよね。」
以前のデジャヴ?なんて言ってみる。
「わはは、マジであいつ眠り姫だ!
やべえ、ツボったっっ!」
ゲラゲラヒィヒィとロックが笑い出す。
「どうやら最近獣人に効く眠り香が出回ってるみたいでさ、そのまま眠っちゃったところを神殿専用の馬車に詰め込まれちゃったみたい」
ひとしきり笑ったあと、ロックが説明を再開する。
「あ~~、あれは効きますよぅ!」
リリーがウムッと首を縦にふる。
「へぇ、リリーちゃんも経験したんだ。
昼間にヘンなでかい袋運んでるなぁ~って、見てた兵士が何人かいたんだよ
それであれが、フィレスだろうって見当つけたんだけどね」
「外じゃお香も拡散しちゃって効かないみたいなんですけど、室内じゃ強力ですよぉ!
私も第三王子から使われた時にはガックリ眠りましたよ。
その前に力いっぱいぶん殴って、王子気絶したんで朝まで何もありませんでしたけどね!
獣人は強い分、警戒心が薄くなりがちなんですよ」
「リリー!でかした!」と抱き合う。
「どうせフィレス、起きて状況を理解したら暴れ狂うだろうから、ストッパーにレーナちゃん来てよ」
「お役に立つかわからないですけど分かりました。
リリーもいい?」
「そうだね、主にレーナちゃんの護衛でお願い。
俺、被害の拡大抑えなきゃならんからね」
「りょーかいしましたぁ!」ビシッとリリーが敬礼をして「お気をつけていってらっしゃいませ」とメンフィスが一礼をする。
その時突然落雷の轟音が鳴り響いた。
「ぅわぁ...神殿の方だぁ。
...王女の命令じゃなきゃ行きたくねぇなぁ」
肩を落としたロックがおもわずつぶやく。
ロックの肩にそっと手を置いて「1秒遅れれば被害拡大」と優しく伝えてみた。
麗しの眠り姫は自力で目覚めたらしい。




