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天の蜜、天の香り  作者: ふもふも
移り香
30/36

ろく

もいっちょフィレスターン

「まぁ、今年もフィレスなのね。

 わたくし嬉しいわ!」

巫女が手を叩いて喜ぶ。

このちんちくりんのどこが可愛いのか俺はわからん。

詰所から移動し、王城の控え室に入る。

「警護の担当をさせていただきますフィレスです。

 よろしくお願いします」


いつもの簡潔な挨拶をする。

「他人行儀なのね。

 わたくしさみしいですわ」

腕にそっと触れてくる行為はわざとなのか無意識なのか、とにかくポーカーフェイスを決めこむ。


あ~~~、巫女がレーナだったらなぁ...、レーナから甘えるように触ってきたら、...うん、完全に容赦なく押し倒すな。


俺の妄想をぶった切るように巫女が声をかけてくる。

「ずいぶん女性っぽい香水をつけられてるのね?」

なんで俺がわざわざ女物の香水なんて付けるんだ...。

「...恋人の移り香ですね」

すると愕然としたように巫女がすがりついてくる。

「あなた、まさかどなたかとお付き合いなさってるの?!

 わたくしというものがありながら、どこのどなたですの!!」


『わたくし』って、いつ俺がお前のこと好きとか思ったんだよ。

接点花祭りしかなかったのに、マジキモイんですけど~~!

ロック~~~、護衛代わってくんねぇ?!


「...お付き合いというか...彼女とは結婚しようと思って一緒に暮らしてます」

あんたには入る隙ないのっ!て、キッチリ言ってやる。


「...なんてこと...」

なんてことって、あんたの頭が『なんてこと』でしょ?

こっれだからチヤホヤされたやつは~~っ!

世界が自分中心で、ま~~さか自分の思い通りにならないことがあるはずない!!って思うんだ。


「フィレス、きっと転がり込んできたその女を無下にできないのでしょう?

 あなたとても優しいもの。

 ...でもわたくしがいますので大丈夫ですから、ね?」

俺の腕を両手で掴みながら、微笑み首をかしげてくる。


寒イボ寒イボッッ!!

はい、こいつ決定。

エマージェンシ~~エマージェンシィィイ!!

頭花畑な危険生物発見。


闇に葬り去ったら後始末がめんどくさいので、さっさと神殿に引き取って頂こう。




巫女を控え室から馬車に乗り込ませ(「フィレスと一緒に乗る!」とか駄々こねだしたときは、危なくす巻きにして放り込むところだった...マジ最悪)馬にまたがり城下のステージに向かう。

舞台裏でまたもやベタベタしてくるのをポーカーフェイスでいなす。

「恥ずかしがって...ウフフ」なんて聞こえ、魔法弾を打ち込まなかった自分を褒めたい。


寒イボ立たせながら巫女をエスコートする途中レーナを見つけた時は、巫女なんか投げ飛ばして群衆をかき分けて抱きつきたかった。

俺の癒しっ!

途中レーナの見せた少し寂しそうな顔は、後でキッチリ確認しよう。

まさかこのアホ巫女に関わることじゃないよね?

このアホ巫女がもし問題になったら絶対消し去ってくれる...。


その後控え室に送り神殿の馬車を待つ間、仕事を終わらせて帰ることばかり考えていた俺は、巫女にヘンな薬をかがされ神殿に連れ帰られた。









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