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天の蜜、天の香り  作者: ふもふも
移り香
28/36

よん

「なんで俺が...」ブツブツ文句を言いながら、ロックは模擬剣を手に取りブンブンと振る。

「レーナ様ありがとうございます!

 一度手合わせしたかったんですよ

 では行ってきますね」

キリっとした笑顔でリリーが声をかけてくる。

「うん、リリーの勇姿楽しみにしてる!」

にこにこと歩いていくリリーに「がんばって~~」と手を振る。



「はじめ!」と声がかかると二人の雰囲気が一変する。

すごいスピードでリリーが突きを繰り出す。

ギギギィィと音がして剣でロックが受け止める。

ロックが蹴り上げるのをリリーが見越して飛びずさる。


リリー楽しそう。

スカートがまるで舞っているようだ。

「なかなかやるじゃん」っていうようにロックが笑う。

こういう時のロックも楽しそうなんだよね。

日頃見ない試合に見に来ていた人は見とれている。


2人は剣の打ち合いが終わると間合いをとり、相手の出方をうかがう。

隣の兵士が「次だな」とつぶやくのが聞こえた瞬間、飛び出したリリーの首元とロックの首元スレスレで剣が止まる。


「わぁ!!」という歓声と拍手が巻き起こる。

「レーナ様~!

 楽しめました~~?」

リリーとロックは挨拶を交わし感謝とねぎらいの礼をする。

そしてトコトコと歩きながらリリーが近づいてくる。


「リリー!!

 かっこよかったよ~

 惚れそうだった!」

「ローデリック様には手加減されちゃいましたけど、レーナ様が喜んでくれたなら満足ですぅ」

リリーは兵士に模擬剣を渡して、少し苦笑していた。

「あれのどこが手加減なのかわからないよ!」

「いえいえ、自分の足りなさを痛感しました。

 もっと鍛錬に励みますよ」


しばらくするとロックも近づいてくる。

「なかなかの人材を手に入れたね。

 リリー、せっかくうさぎの獣人なんだから、足を鍛えるといいよ」

「はぁい!

 ローデリック様、ありがとうございます」

ビシッと敬礼をするリリーと私に「じゃぁ、またね」と言い、ロックは去っていった。


「やっぱ、ローデリック様はいい男ですよ。

 次こそは倒しますねぇ!」

リリーは拳を握り力を込める。


自分に誇れる何かがあるっていいなぁ...。




夕刻、リリーと花束を持って屋敷に戻る。

「おかえりなさいませ、レーナ様」

「ただいま!

 これ、メンフィスたちにお土産。

 花びらと巫女様の魔術、すっごい綺麗だったよ」

玄関に迎えに来てくれたメンフィスに、にこにこと声をかける。

「今日はフィレス様も仕事が深夜に及びますので、お早いお食事にいたしましょうか?」

「そうだね、今日は疲れたから早く寝る事にするよ」

「わかりました」と一礼しながらメンフィスは奥へと進んでいく。


「リリーも今日はありがとう。

 一人で行くよりずっと楽しかった!」

「いえいえ、こちらも十分楽しませていただきましたよ。

 ありがとうございました」

部屋の前まで送ってくれたリリーは「そうだ!」と突然つぶやく。

「レーナ様、たまにはお心を打ち明けても、バチはあたりません。

 いつかいなくなってしまうかもしれないという、不安な思いが『ヘンタイ』行為に走らせてるんじゃないかと私は推測しますよ」

「わ...わかったわ」

赤くなりながらうつむく。

リリーにはお見通しです!と胸を張りニカッと笑う顔は、とっても可愛かった。




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