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獣人の腕が宙をポーンっと飛んでいった。
「ぎゃああぁぁ、...ちくしょうっ!」と叫ぶ姿を、私は泣きながら呆然と見つめた。
「レーナ...!」
背後から会いたかった大事な人の声が聞こえる。
「ふぃ...フィレスフィレスっっ」
ガバッと立ち上がって抱きつく。
「こわかったぁぁあ!!
色々舐められたりして...怖かったっっ!
でも腕輪が光ったから逃げられたのぉ~~!」
ガタガタと震えだす体を「うん、うん...」と抱きしめながらフィレスは何度も頭を撫でてキスしてくる。
「レーナの匂いは圧縮して小さな魔力の玉に閉じ込めたからもう大丈夫。
もう恐いのは増えないよ。
ちょっとだけメンフィスのそばに居ててくれる?
掃除してくるからね?」
ロックが痛ましそうにメンフィスを担ぎ起こしている。
応接室のソファに寝かすようだ。
振り返ると、うでを切られた獣人はその場にいなく、もしかしてさっきの仲間のとこに行ったのかもしれない。
「レーナ、お前よく頑張ったな!」
応接室でメンフィスを寝かすと、屈託なく笑いながらロックが頭を撫でてくる。
「じゃ、ひと暴れしてきますか!」
ロックがそう言うと、フィレスとロックは応接室を出て行く。
あわてて地下から飛び出してきた獣人3人の前には2人の男がいた。
当然獣人は3人もいるし、手ぶらでやってきたわけではないから、タカをくくった。
しかし、軍隊で一騎当千の呼び名高い2人の相手ではない。
一人はフィレスの魔術で足元からひき肉のようになり果てた。
もう一人はロックによって、関節のひとつひとつから削られるように細切れになった。
残った片腕のない獣人は当然命乞いをする。
「レーナを知ること自体死刑なのに、あそこまで追い詰めて...、おまえ普通に死ねると思ってるか?」
「オレね、吸血鬼だから血大好きなの。
お前の血、不味そうだけど残らず散らしてやるから、感謝してよ」
...片腕の獣人の姿を見たものはいない。
「さぁ、レーナここが王都で一番の宿泊宿なんだよ」
「こ、こんな高そうなとこ...おまけにホコリだらけで来ちゃっていいの?」
「何言ってるの~!
俺の家(血みどろで)グッチャグチャだからいられないし、家で働いてた人はみんな怪我して動けないし、お金は姫様がポケットマネーで出してくれるから...てか絶対出させるから大丈夫。
レーナの汚れだってお風呂に入れば問題ないよ。
ほらほら、先に入っておいで」
フィレスに促されて脱衣所に足を踏み入れる。
鏡を見ると涙で顔はグチャグチャだし、頭もボッサボサだ。
これはヒドイ!
しぶしぶ服を脱いで浴槽に浸かる。
「うはああぁぁ~~~!」
サイコーでごわっす!!
「さぁ、レーナ!
あのクソどもが触ったとこを、俺が綺麗にしようじゃないか!!」
ゆったり入っていたら、突然浴室のドアが開かれ驚き沈みかける。
「ちょちょちょちょっと、なな、何入ってきてるのよ!
自分で洗えるから、ちょ、いやっ!
エッチなことしないで!!」
「服を着てるんだから大丈夫!
ホラ石鹸みっけた」
「フィレスの職務はだいたい途中で放棄しておわりじゃないっ!」
「今日は、会えなかった10日分と消毒があるからね、絶対全身全て余すとこなくキッチリ洗い終えるまで遂行するよ」
「それもぃやあぁぁぁ!!」
ちなみにフィレスは八つ当たりとしてロックに、屋敷の修繕とその間の宿泊費と治療費の全額支給を王女に交渉に行かせた。
「くそ、功労者なはずなのに、なんでオレだけ!」
それが下りなきゃ俺、国外出るからね...。




