さん
「オイ、どこに隠した!!」
爆発音と一緒に怒鳴り声が上から聞こえてくる。
きっとメンフィス達が応戦してるんだろう。
不法侵入者は誤って殺しても罪にならんからね。
「すごい香りだ...おれが一番に味わうぞ」
「バカ言え、そんなズルは許さねぇぞ」
恐ろしい内容だ。
おわったおわったおわった...。
傷害誘拐監禁事件!
フィーのバカフィーのバカフィーのバカ!!
「くそ、出処がわかんないな。
いっそ散らすか?」
「バカ言え、王都中が集まって、とんでもねぇことになるぞ」
もう毛布をかぶって震えるしか方法がない。
人を言葉で操れる縛りの呪だって、名前のわからないやつには何の驚異でもない。
ニンゲンと変わりないセルジュは奪われるだけの者だ。
「おい!本棚の裏に扉があるぞ!」
「開けてみろ」という声が聞こえるとフワッと風が入り込んでくる。
「おい...すげぇ匂いだな」
ロウソクは全部消して、小さな抵抗をしてるけどこんなの獣人には無意味だろう。
小さく丸まってると「あぁ、みぃつけた...」と聞こえた。
毛布をはがれ、手首を掴まれて首に顔をうずめられる。
「...っ」
全身鳥肌冷汗ビッショリだ。
犯人は3人いるらしい。
汗をぺろりと舐められる。
「最高だな...マジで甘ぇ!
こりゃ娼館の女なんて目じゃねぇぜぇ」
天を仰ぎながらゲラゲラ笑う声が最高に不快だ。
「はっなっせっっ」
自分の腕をグイグイ引っ張るけど、ガッチリ掴んで解けない。
「おい!おれにも味あわせろ」
「次はおれだ」
あちらこちらから舐められて泣きたくなる。
「チッ、虎の所有臭がするな」
「服を脱がしちまおうか」という話しに私の涙はあっさり決壊した。
「やめてやめてやめて!!!」
フィレスのくれた腕輪が熱い...。
途端に光が弾けた。
ハッと我に返ると獣人が弾き飛ばされてうめいている。
「...ひっく...今のうちに...ふぐっ...」
泣きながら震える足をなんとか動かしてヨロヨロ出入り口に向かう。
地下の石段を上がっていくと廊下にメンフィスが倒れていた。
慌てて駆け寄り声をかけると、うめき声をあげる。
良かった、生きてる...。
「どうしよう、どうしよう...」
地下から「チクショウ、おい起きろ!!」という声が聞こえる。
とうとう私は泣きながら声をあげる。
「ふぃれすぅぅう、こわいよぉぉ!!
たすけてぇぇ...」
目を血ばらせながら地下から出てきた獣人に、腕を掴まれそうになった瞬間、獣人の腕が宙に飛んだ。




