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それは3時間ほど前の話
ザクザクと雪を踏み鳴らしながら、レーナは2日前に仕掛けた3つの罠を確認しに来ていた。
「頼みますよ~!なんでもいいからかかっていてね~」
不思議なことに、ここのところ森が騒がしい。
おかげでどうにもうまく食材様がかからないのだ。
当然気にはなるが、今はとにかくご飯が先だ。
3つ目の罠を確認しに行くと、風に乗ってなにかが聞こえる。
む?なにか?
そっと首を巡らし突き出た岩の上からそっと下を覗くと、1キロ先の眼前に広がる雪原に国の正規軍の旗がはためくテント群があった。
「!!!」
遠くてはっきりとは区別できないが彼らはそれぞれに、朝食を食べたり片付けをしたり、鍛錬をしたりしていた。
人間、亜人、獣族...種族様々である。
あまりの驚きにしばし動くのも忘れて呆然と見入っていたレーナは、話をしている3人組の1人がゆったりとこちらを振り返るのを目に留めた。
まずいまずいまずいまずいまずうううううい!!!
慌てて首を引っ込めレーナは後ずさった。
あまりの勢いに尻餅をつく。
見られた?
気づかれた?!
獣族ならヤバイ!!
あいつらは半端ない!!
視力も嗅覚も並以上だ。
見つかってるかもしれないのに、のんきになんてしてたら頭からバリバリ食われる!!
力いっぱい走り出すと、レーナは一目散に走る。
3つ目の罠も回収しないまま...。
ずっと使われていなかった国境の監視砦に飛び込むと、レーナは罠や洋服をカバンに詰め込む。
「大変お世話になりました!!!
風雪を防いでくれて本当に助かりました~~!!!
申し訳ないけど、この度は緊急離脱いたします!!」
だれもいないのに叫ぶようにお別れを告げる。
使った布団はキッチリ畳んで、ホコリよけの布を元に戻す。
暖炉の掃除は朝やった。
自分の手際の良さに感動だ!
自分偉い!!
朝やっといてよかった!
そのままカバンを「よいせ!」と背負うとレーナは砦に一礼して去っていく。
いやぁ~、本当に危ないところだった...。
夕の刻、雪がチラチラ降り出した。
「うぃっくしょん!」
あ~、このまま越境したかったけど、ムキになって歩いたって遭難コース突入だわ...。
しょうがない...先日みつけた洞窟で雪が止むまで休憩しよう。
洞窟の近くには小さな目印をつけたから入口はすぐに見つけられた。
なんでこんなに魔力が少ないの!!!!と、歯噛みしたくなるような魔力で薪に火をつけて、ホッと一息つく。
今日は散々だった...。
くそ、罠1つ忘れた。
あぁ、かあさまみたいに動物と話せたら...。
あぁ、とうさまみたいに魔力が一人前だったら...。
焚き火を見つめながらしばらくぼんやりしていると、ふと自分に影がかかる。
「...ん?
ぎゃあああああああ!!!!」
洞窟の入口には軍服を着た獣族がひとり、にこにことたたずんでいたのである。
出口を塞ぐように...。
「お嬢さん、罠を一つ忘れてますよ」
すんません