じゅうよん
とうとう自分のまわりに見えない壁が出来上がってしまった。
自分が手を差し出せば触れるものの、相手からは一切レーナに触れたりすることはできない。
ヘンタイここに極まれり。
ここまでくると究極の防御魔法だ。
こんなのどこの国王すらかけられていないだろう。
機会があったらフィレスが究極なものやらかしてると教えてあげよう。
ま、こんな庶民が会うことなんぞ永遠にないだろうけど...。
フィレスを無理やり仕事に送り出し、庭をブラブラしてふと気づくと、この間見た馬車のご令嬢が柵の外から笑いかけてくる。
「どうです?城の中はくつろげまして?」
優雅に笑うご令嬢に、私はおずおずと声をかける。
「立派ですけど...あのぉう、家の執事さんとか心配するんで帰してもらえませんか?」
はい、連れさらわれました~~~~!
ご令嬢の帽子が屋敷の方に飛ばされて中に招き入れた、までは良かった。
いや、良くないんか?
彼女がつまずいたから手を差し伸べたら、そのままガッチリ掴まれて、馬車に押し込められ...。
ここはどこ?
馬鹿です。
みんな心配してるだろうな~...。
「うふふ、大丈夫ですわよぅ。
もう家の方にはしっかり伝令を派遣させていただいたわ」
「さようですか...」
どうしよう~~~!!
悠然と微笑むこの人だれ?!
「さぁ、それよりもフィレスがこんなかわいい子を教えてくれないなんてどういうことかしら?」
「あ...、私レーナといいます。
すいません、庶民でマナーがわからなくて...フィレスと知り合いなのですか?」
私はぺこりと頭を下げてみた。
「うふふ、わたくしはこの国の第1王女、セリア・ミリエル・ラグロスですわ。
フィレスの母親とわたくしの叔母は姉妹ですのよ。
さあさあ、面白いことをいたしましょう。
ついてらっしゃいな」
ふわふわと扇をあおぎながら、セリアは護衛を引き連れて前を歩いた。
護衛さん、私のことをジロジロ見んでない!
って、あっれぇぇ~~~~?
この王女様からも背中から黒いものが出てるぞ~~~!
もうおかしくてたまらん!!ってすっごい見えるぞ~!!
ちょっとビクビクキョロキョロしながらついていくとそこは大きな土色の建物だった。
「こちらよ、これから視察をいたしま...ププッ!
いけませんわ!
笑いが止まりませんわ。
失礼、足元に気をつけていらして。
今日は軽い試合をいたしますのよ」
セリアは迷いなく足を踏み入れる。
そこは闘技場になっていた。
眼前にはラグレス王家の立派な紋章が壁にかかげられている。
その下に一番隊、二番隊、三番隊と、魔術師隊が綺麗に整列している。
「すっご~い!」
王女の斜め後ろからひょっこり見ていると、半端ない気配に我に返る。
ぶええぇぇぇ~~!!?
なんかフィレスいるしっっ!!
くぁあ~~、半端なくこええええぇぇぇ!!!
ロック、下向いて震えてるっっ!!!
笑ってんでしょう!!
知ってるんだからねッ




