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天の蜜、天の香り  作者: ふもふも
香りの行方
1/36

いち

むかしむかしの物語...。


神様の国に、それはそれは美しく甘美な香りのする花がさいておりました。

その花は神様の国にしか咲かない天上の花でした。

その天上の花を心から愛した種族がおりました。

来る日も来る日も、花を愛で世話をしたその種族に、花も大いに心を開き、光り輝くような花にと育っていきました。

そうして日頃のお返しがしたいと、花は七色に輝く甘露の雫をその種族に贈りました。

甘い甘い雫は飲めば体からその花の香りがして、その種族も大いに喜び心慰められたのです。


そのころからその種族は「花の守り人 <セルジュ>」と呼ばれるようになりました。

どのくらいの時間が過ぎたのでしょうか?

ある日神様は、神様の国にくるたくさんの種族や生き物におっしゃりました。

「しばらく眠りにつくから」と、そして「ここの扉は閉めるから、そなたらは下界に降りなさい」と...。

セルジュやそこにいた者達は、泣く泣く神様と咲き乱れる花々とお別れをして、下界に降りていきました。

多くの種は神がいないことにつらく悲しみ嘆きました。

ところがセルジュは長い長い時を天上の花と過ごし、甘露の雫を飲んでいたため、とてもとても甘い香りを放つ種族となっていました。


天の花の香りを放つセルジュ

流れる体液は蜜の味

かのものを手に入れれば、その場は神が住まう天の国


あわれ、セルジュは略奪されるものとして、常に追われる者となりました。

それをご覧になられた神様は不憫だとお思いになり、お眠りになる前にご自分の身を削りセルジュに力を与えたのでした。


一人に一つ、誰にも負けない力。

剣の才能を持つもの、底なしのような魔力を有するもの...、それぞれのセルジュがなにか一つの力を持ち、セルジュは散り散りになっていったのでありました。


遠い遠い昔話でございます。





「...っく!しくじった!!」

森の中を疾走しながら、レーナは悪態をつく。

ゆるいウェーブががったチョコレート色の髪が乱れるのも構わず、レーナは大慌てで森を進む。


森の木々がざわついていたのを、1週間前から知っていたはずなのに!!


まさか国の軍がこんなとこで、野営訓練なんてするはずがないと思い込んでいた。

実際最近は国同士のいさかいもなく、平和そのものだったし、こんな雪奥深くの山でなんかで今まで訓練なんて行っていなかった。

「大体そんな訓練、国境付近でなんかでしちゃ争いの原因でしょ!?」

大きく息を吐きながら空を見上げると、空高くゆうゆうと鷹が旋回している。


見られただろうか?


息を整えながら今来た道をそっと振り返る。

髪より濃い色彩の目に宿るのは怯え。

「...見られて、ないよね?」




レーナは今、ラグロス国とエ・ジェール国の国境沿いにある砦にひっそり間借りしている。

「あ~も~~~!このへん集落もないし、兵も駐屯していないから安心だったのに...。」

親も3年前死んで一人だ。

なんでこんな隠遁生活って、それは当然私がセルジュだから...、生粋の。


神様がお隠れになり、だいぶっていうかン千年も経ってるから、セルジュの血も薄くなってきた昨今。

幸か不幸かレーナの両親は共にセルジュで、その両親から生まれたレーナはセルジュの血をより強く発揮しているのだ。

のんきに街なんておりていけない。


とにかく厄介事には起こる前に潰す!サッサと帰宅を決めて荷物をまとめよう。

そうやって昔から家族はひっそり生きてきたのだ。


これからもひとりでやってく。


鼻息荒くレーナは下ろした髪をポニーテールにギュッと結び直し、森深くに進んでいった。

見つかる前にこんなとこおさらばよ!





緊張中

ここまで読んでいただきありがとうです

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