第7話 「黄金週間:後悔」
Side.如月風音
五月二日火曜日、午後二時十七分。駅付近の喫茶店にて。
私の前にはテーブルの上にぐったりしている少女が存在していた。
「…………ほら真緒。気持ちを切り替えてさ。あの世界にもいなかっただけなんだしまだどこか別の世界で生きてるってきっと」
そう言ってもその少女――初月真緒は何の返答も返すこともなかった。
真緒には幼馴染がいる。八城勇志という少年だ。この二人はともに同じ学校に通う同級生だった。
去年の夏休み前までは。
いつからいなくなったのかはわからない。ただはっきりしているのは、去年の夏休み中にいなくなったということのみ。
それからというもの、今までは明るくクラスのムードメーカーのような役割をはたしていた彼女のテンションは著しく低下してしまった。
同じ中学校出身の生徒に聞く限りだとちょっとした事情で彼が数日休んだだけでなに若干元気がなくなっていた期間があったそうなのだが、今回はそれ以上らしい。
そのときはまだほんとに元気がない程度で済んでいただけのようだったが、今は無気力というか活力がなくなっているのだ。
八城が行方不明になったことに気がついてからの数週間は捜索に必死だった。でもそれからというもの、燃え尽き症候群に陥ったかのようになってしまっていた。
それでも最近は比較的治まってきたというのにまたしてもこれである。
「…………だってさぁ………………」
と、かすかに聞こえる程度の音量でそうつぶやいた。
ガバっと起き上る真緒。
「折角勇志が見つかるかなって思ったのにその風音たちが言った世界にもいなかったんでしょ?」
そう言って再びテーブルに突っ伏す真緒。
確かにやっと会えるかもしれないと期待が高まってしまったがゆえに再び心に突き刺さるものがあったのだろう。しかし、そこまで落ち込むものなのだろうか?
例えば圭ちゃんとかが行方不明にでもなったりしたら私も確かに少しはショックを受けるだろう。だけど、そこまで深刻になるほどではない。
でも、目の前にいる真緒の場合はどうだろうか?
はたから見ている限りではお互いに好意を寄せていた真緒と勇志。そんな二人だったからこそ、受けるダメージも大きかったのだろう。
「まあまあ、諦めなけなければきっとそのうち見つかるって。だからさ、今はそんなに落ちかまないようにしなよ」
ずいぶんと楽観的なことを言ってしまったかもしれない。しかし、一度言ってしまった言葉を消すことはできない。
「…………そうだよね」
そうぽつりと漏らし、おもむろに真緒は立ち上った。
「風音ありがとうね、相談に乗ってくれて。お金は私が出しておくから」
そう言ってレジで精算を済ませ、店を出で行く真緒。
このときの私は、彼女を追いかけることもできた。しかし、無遠慮な言葉で気づ付けてしまったと思った私にはそれができなかった。
このときの会話が私と真緒の最後の会話になるとは知らずに…………。
どうも、マチャピンです。
GW編の第2話(?)をお送りしました。
GW編は5/1~5/5までの5日間を5人の視点でお送りしていきたいと思います。
では、また後日お会いしましょう。