rain〜雨の日に〜
息抜きに書いてみました。
この小説から、何か感じる物があったら、嬉しいです。
「雨って嫌いだなあ」
そう私が呟くと、彼女はそうかなあ、と言った。
「あたしは雨、好きだけどな」
どしゃぶりの雨の日。教室での会話である。
私は彼女に質問した。
「ねえ、どうして雨が好きなの」
すると彼女は、
「雨って汚いものを洗い流してくれるような気がするんだ。だって、道路の泥とか洗い流してくれるでしょ」
と言った。
「じゃあさ、あなたはどうして雨が嫌いなの」
逆に、彼女から私への質問。
「だって、泥が跳ねるし、ビチャビチャになるじゃん」
それだけなの、と彼女は首を傾げた。
こくんと私が頷くと、彼女はそうなんだ、と黙り込んでしまった。
きっかり一分後、彼女が口を開いた。
「それがいいんじゃないのかな」
何のことか分からなかった私は、
「え、何のこと」
と聞き返す。
「あ、ごめん。さっきの雨の話のこと。ビチャビチャになったり、泥跳ねが付いたりするのが『雨らしさ』何じゃないかなって、ちょっと思ったの」
そうかなあ、と首をひねる私に、彼女は笑って見せた。
「分からなくてもいいの。
考え方は人それぞれだから。
ただ、こんな考え方もあるんじゃないかなって、あなたに伝えたかっただけ。
だって、どうせ同じことをするんだったら前向きに考えた方が得だし、楽しいじゃない」
と。
「雨がないとね、この地球に生きてるもの全てが死んでしまうよ。存在しなければいけないんだよ。雨は。だから、楽しんだ方が得かなって、思ってる」
「人生も同じだよね。楽しんだ方が得じゃない。だから――」
彼女は、天井を見上げた。
「だから、前向きに生きようよ」
彼女と、雨について語り合ったあの日から、何年か経ち、彼女との関係もそれっきりになってしまった。
しかし、今でも、どしゃぶりの雨を見ると思い出す。
『どうせ同じことをするんだったら前向きに考えた方が得だし、楽しいじゃない。
だから、前向きに生きようよ』
という彼女の言葉を。
《完》
読んでくださった方、ありがとうございました。
シンプルにしようと、余計な描写や「!」「?」など、入れなかったのですが、どうでしょうか。
よかったら、感想などお寄せ下さい。