9 千人目
千人組手をすることになったアウリエ。なんの問題もなく百人くらいは瞬殺していた彼はその姿と修行の時の体たらくのギャップに驚かれていた。
もはやわざと手を抜いていたのではないかと疑われているほどだったが、彼は本気で修行に着いていけないのだった。まあ、まだまだ千人組手は続く。
「本当なのか?怪しくなってきたぞ?」
「でも、なにかあるんじゃないの?筋肉の使い方とかね?」
ユーリとリリーの二人は“コソコソ”と会話をする。
その内容は、アウリエがサボっていたのかどうか。
これだけの実力があるとやはり疑われてしまうのだった。そんなことなど露知らず、目の前の敵を“バッタバッタ”と斬り倒していくアウリエ。
これで十分の一か。
あまりにも多すぎるな。
だが、多いだけで問題ななんにもない。
このままのペースでいつかは終わるだろう。で、これが終わったら俺も宮廷騎士団に所属し続けることができるわけだ。
そうすればリリーと結婚できる。
難しいことはわからない。
が、それは確かだろう。
俺がそこを目指して頑張っているのも確かだ。もうあの地獄のような特訓はやりたくない!でも、絶対にリリーとは結婚したい!やるしかない。
百人は二百人になる。
二百人は三百人になる。
三百人が五百人になった頃、もう誰も動けなくなっていた。
アウリエの前には死体の山、ではないが、斬られすぎて身動きが取れなくなった人々の山があった。それを前にして、誰もが(戦いたくねー!)と思うのだった。
「……俺はどうすれば?」
「まあ、仕方がないのかもしれないな……」
「思っていたよりも強いのね……」
強すぎてリリーも引いていた。
俺はそれがなんとなく伝わってきて、なんかめっちゃ悲しくなってしまうのだった。グレン師匠、貴方は俺のことを『バケモノ』にしてしまったんですよ……!
「もう、順番とかいいですか?みんな一斉に戦っても」
「な、逆にそれでいけるのか?そんなの無理に決まってる」
「できると思います。だって……」
アウリエは言葉を溜める。
「――まだ誰一人として俺に届いてないですから。俺に届く範囲に誰も来れてないので、絶対に大丈夫だも断言できます。それに、体力もまだまだありますしね」
鋭い眼光でそう言ったアウリエ。
唖然とするユーリ。
そして、やっぱり引いているリリー。
三者三様それぞれ思っていることは違った。
だが、誰もがその実力は認めざるを得ないのだった。音すら鳴らないその剣さばきはあまりにも非、現実的で、人間業には見えないのだった。
「聞こえたか!お主ら!一斉にかかれ!実戦形式だ!」
「「はいっ!」」
一人では勇気が出なかった兵士たち。
彼らはみんなで戦えるとなるとすぐに駆け出すのだった。そして、不用意に間合いに入らないようにアウリエのことを取り囲む。
気配さえ感じ取れればなんとでもなる。
グレン師匠と一緒にやった気配切り。
アレの記憶を思い出せばなんてことはないはずだ、
きっと、後ろから来る敵も即座に反応することができるはずだし、そんな不意打ちのような攻撃にやられる俺ではないらしいが、どうだ?
中々来な――来た!
俺は背後ですら瞬間で切り裂く。
まるで魔法のようなそれを見たみんなは後ずさりする。
本当に後ずさりしてばかりの人たちだな。ちゃんと俺と向き合うつもりはないのだろうか?意外とやってみたら勝てるかもしれないことないかもしれないのに。
「今度はコッチからいかせてもらう!」
俺は集団に飛び込んだ。
そして、もう見境なく斬って斬って斬り倒していく。
どんな兵士が相手でも関係はない。
とにかく俺は突っ込んでいって居合切りをする。それだけでこの千人組手を終わらせることができるはずなのだ!やるしかない!
そして築かれている山。
さっきまでよりもハイペースにそれは大きくなる。
兵士たちは円の中心にいるアウリエへ向かっていった。
が、誰一人としてその斬撃を目にすることはできない。どれだけの人数に囲まれていても、どれだけの人数を相手した後でも、それは変わらないのだった。
そんなこんなで最後の一人がユーリ。
もう彼自身も勝てないことはわかっていた。
それでもこうなった以上はやらないといけない。
なので、戦わないといけないのだった。“ボコボコ”にされることがわかっていても戦わないといけないのはやはり気持ちとしては最悪なのだった。
「じゃあ、最後、よろしくお願いします」
「千人目!ユーリ!いくぞ!」
威勢がよかったユーリは間合いに入った途端に地面に倒れていた。
無慈悲なまでの実力を誇るアウリエ。
「これだけのことをやったら宮廷騎士団として認めてくれるよね?」と言って、ユーリを上から見下ろすのであった。めちゃくちゃ怖いのであった。
その怖さはリリーまで伝搬する。
「アウリエ……」
「リリー、これでなんの問題もなくなるはず」
「そう、ね?そうよね」
ちょっとだけ怖がられることにはなったが、二人はきっと大丈夫だ。というか大丈夫だ。愛ゆえの惨状なのだから、ちょっと冷静になりさえすればリリーにも受け入れられる。
もう年末です!
読んでいただきありがとうございます!
(小説を消すこともあります)




