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8 やはり最強か……


「頑張ってね。アウリエ」

「絶対に勝ってきます。リリー」


千人組手をすることになってしまったアウリエル。彼はその試合の当日にいつものように体育館のような訓練施設にやってきていた。

当然のようにその勇姿を見届けようとリリーもそこにはいた。エメラル宮廷騎士団員のみんなはよくわからん男に負けるわけにはいかないと意気込んでいた。


俺の目の前には大量の兵士たち。

みんな俺よりも筋骨隆々で、鍛えているのがわかった。

でもオイラ負けないよ。

序盤も中盤も終盤も隙がないよ。

せっかちなユーリはもう今すぐにでも試合を始めようとする。みんなここに来たばかりだろうし、俺だってまだちょっと眠たいのに。


「それでは!早速だが千人組手を始める!」

「「はい!!」」

「もしも、全通されるようなことがあったら恥だ!わかったな!」

「「はいっっ!!!」」

威信がかかっているから普段よりももっと威圧感があるユーリ。そして、今にも俺のことを殺してきそうなほどの殺意に満ちている兵士たち。


大丈夫なはず。

グレン師匠を信じれば勝てるはず。

でも、この国に来たことでちょっとだけ自信を無くしてしまった。

みんなが当たり前のようにできることが俺にはできないのだ。

負けることはあまり心配していなかった。が、それでもどこかに不安があるのだった。そんなことはないだろうけど、たまたまユーリに勝てただけって可能性もなくはないからな。


「それでは一人目!前へ!」

「はい!よろしくお願いします!」

「よ、よろしく」

一人目から気合いが入っている。

なんだったら入りすぎているくらいに気合いが入っている。俺は、早速の戦闘に備えて居合の構えに入った。すると、向こうは上段の構えで俺を睨む。


「もういいぞ?いくらでもやってくれ」

「わかりました……」

“ズズズッ……”と摺り足で相手に近づく俺。

それを受けて一歩下がってしまう相手の男性。

こんなのに時間をかけてたら日が暮れてしまう。ちょっと無理があったとしても相手の懐に潜り込んで攻撃をしてしまおう。


そんなことを思ったアウリエは前へ走る。

そして、間合いに入った男性を音もなく斬り倒した。

それは一瞬の出来事だった。

が、他の兵士たちを萎縮させるのには十分な出来事だった。なので、本来であれば次々やってくるはずの兵士たちが“マゴマゴ”とする。


「なにをしている!次の者!前に出なさい!」

「本当にさすがだわ。ユーリが負けただけあるわね」

「そんなことはいい。今回は雪辱戦でもある」

「でも、千人が終わった後に“ノコノコ”出ていくことになるんでしょ?それで勝っても嬉しくないんじゃないの?どうなの?」


千人組手の最後の相手はユーリだった。

疲弊したところを狙おうとしているのだった。

「とにかく!次の者!前へ!出たら褒美を出す!」

「二人目です!よろしくお願いします!」

ユーリの「褒美」という言葉に釣られた“ムキムキ”のマッチョの男性が前に出てきた。それに対してもまた居合の構えで迎えるアウリエ。


「い、いざ!尋常に――」

「遅い」

アウリエは二人目の元にも走っていく。

それはあまりにも瞬発的すぎて、誰の目にも止まらなかった。ユーリですら目で追うことができないほどのスピードで二人目を轢き倒すようにやっつけた。


それからも何度も何度も同じような光景が繰り返される。

修行のときはすぐにバテていたアウリエ。

なぜか実戦になると異常なまでの体力に変化する。

五十人を終えて、数十分の連続戦闘であったのにも関わらず、汗一つ流していない、息すら乱れていない彼がいるのだった。それはスゴい不思議。


「アウリエ。本当は修行もこなせるんじゃないのか?」

「いや、それは本当に無理なんです。体力が」

「今のお前の姿を見ているととてもそうは思えない」

たしかに、俺も不思議だ。

ずっと集中してるはずだし、それなりに体を動かしているはずなのにまだ全然余裕がある。もしかすると無駄のない動きができるようになっているのかも?


でも、そんなに何度も練習した覚えはない。

無駄のない動きでやったことと言えばRTAくらいだ。

(RTA=リアルタイムアタック)

じゃなくてTAくらいだ。

(TA=タイムアタック)

師匠が自分で作ったといっていた横スクロール型のボードゲームをひたすらにタイムアタックしていたくらいしか、動きに無駄がなくなる理由がない。


自分でもなにを言っているのかわからないぞ。

でも、マスラオというキャラが主人公のゲームをやっていただけだ。

まあ、関係ないか。

よくよく考えたらゲームやってるだけで居合の動きに無駄がなくなるわけがないし、きっとなんかグレン師匠があり得ないようなやり方で俺にそれを習得させたのだろう。


俺にそこまでの才能があったわけではないと思うし。

そんなことを思いながら俺は、次から次へと兵士を斬り倒す。

やがてそれは百人まで到達した。

が、それでもまだまだ俺には全然余裕があるのだった。毎日これを修行としてやってくれたら俺はこの宮廷騎士団に在籍し続けることができるのになぁ。




クリスマスが今年もやってきました!

よい一日を!

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