5 政略結婚味のある恋愛
暴漢に襲われてしまったリリーを助けたアウリエ。彼はその圧倒的な居合の実力で三人もいた暴漢を一瞬で打ち倒してしまった。
その姿や言動に心を打たれたリリー。(もはやこうなってしまえば……)と胸の中にある決意を固くするのであった。
しばらくはみんなから称賛されていた。
でも、時間が経つとみんな興味もなくなるようで。
テーマパークの隅っこにあるベンチに二人で座っていた。
なんだか二人とも人混みに疲れてしまったようだ。まあ、こんなのはどっちがどうってアレでもないが、特に俺は人に酔いに酔ってよもや吐きそうになっていた。
アウリエは暗くなってきた園内で遠くを眺める。
その視界には“キラキラ”光るイルミネーションがあった。
そして、家族やカップルの幸せそうな笑顔があった。
彼にとっては名前も知らない誰かの笑顔を見ることすら久しぶりだった。里にいる時はみんな知り合いだったので、見ず知らずの他人という存在がどこにもいなかった。
「先ほどは本当にありがとうございました」
「いえいえ。あれぐらいならいくらでもできますから」
「そうですか?それにしても、本当にお強いんですね」
「たまたま師匠がよかっただけです」
「たしか、グレン様がお師匠なんでしたよね?弟から色んな話を聞いていますし、両親も色んな話を聞いています。もちろん、まだ知らないことばかりですからね?」
俺がやったことは、俺が思っていたよりも重たいことだった。
騎士団長を一瞬でうち伏せた。
それはこの世界にとっては思ったよりも重たいこと。
それこそ、俺みたいな名前もこの前知ったような人間に対して、政略的な関係性を模索しようとするくらいには重たいことだった。団長ってチャンピオンみたいなものだろうしな。
「それにしても、みんな幸せそうですよね?」
「そうですね。都会ってこんなに人がいるんですね」
「あまりここには来たことがない?」
「ないですね。ずっと辺境の地で暮らしてきました」
俺が居なくなってしまったことで本格的に消滅することになりそうなアクリスタル。俺はあそこにもちゃんと愛着があるし、できることならばちゃんと残ってほしいが、無理そうだなぁ。
「だからこそ、自分に厳しくできたんでしょうね?」
「あは、あはは……そんなことないんですけどねぇ」
本当にそんなことないから笑うよな。
コーヒーブレイクとティータイムくらいしかした記憶がない。修行なんて真水で言えば本当に一日一時間くらいしかなかったし、それも全然厳しくなかった。
ずっとゲームばっかしているときもあったな。
ラグビー?みたいなスポーツをやったりもあった。
まあ、なんか、なにをやったのかはあんまり覚えてないかも。
覚えてないから他の人にこれを教えることは無理そうだな。後、全くもって努力はしてきてないから、宮廷騎士団の練習に着いていくのも普通に無理そうだな。
「あの、大事な話をしてもいいでしょうか?突拍子もない話です」
「な、なんですか?もちろんいいですよ?」
「ハッキリと言います」
俺は視線をリリーに移す。
その表情は、固く緊張している様子だった。それだけではなくて、なにか強い意志のような物も感じられる顔だった。なんだろうか、さすがに告白されるとかはないだろう。
「あの、私と結婚を前提にお付き合いしていただけませんか?」
「……な、それ、本当ですか?」
「本当です。信じられないかもしれませんけどね」
「俺なんて、田舎の出の普通の男ですよ……いや、学歴とか考えたら普通よりもかなり下の方の人間だと思いますし、後、普通に出会ったばかりですし」
「そんなことは別にいいんです」
「まあ、そうですよね。俺の実力が大事というかなんというか」
「それはそうです。でも、いいじゃないですか?それでも」
言うて俺は自由恋愛系の価値観で生きてきたからな。
なんだったらウチの父は隠れ里で暮らしている母を追ってなにもないあそこに移住してきたくらいの人間だからな。あんまりこういう権力系の恋愛に慣れていない。
「まあ、なんでしょう……どうすればいいのかな?」
「考えておいてください。絶対に貴方のことを振り向かせますから」
俺みたいなもんが断っていいのか?
そして、俺みたいなもんが付き合っていいのか。
それはそれとして、こんなに出会ったばかりの人間と結婚を前提に付き合ってもいいものなのか。色んな考えが頭の中を巡って結果的に思考を止めてしまった。
止まっている間にも物事は進む。
リリーは俺を振り向かせると言い切った。
それはつまり、まだ俺にも可能性はあるということだ。
こんなの初めてだからどうしたらいいのかわからないよー。
なんとなく似たようなことを覚悟してここへ来ていたはずなのに、どうしてかなんにも考えていなかったみたいにそのままの自分で受け止めてしまった。
お互いのことなんてなんにも知らないのに結婚を前提に付き合うなんて、そんなの本当にいいの?俺なんてただ強いだけの人間なのに、本当にいいの?
今日はクリスマスイヴ!
枕元に靴下を置いておくのをオススメします
(小説を消すこともあります)




