4 暴漢に襲われるの巻
ユーリの姉であるリリーと買い物に行くことになったアウリエ。彼はこの街のことをなんにも知らなかったので、この二人だけの買い物をエスコートしたのはリリーだった。
今はテーマパークにある魔法によって動いているメリーゴーランドに二人で乗っている。政略結婚を覚悟して生きてきたリリーにとっては、見知らぬ人との恋愛に対する抵抗などあまりないのだった。
「楽しかったですね?アウリエ様?」
「そ、そうでございますね。中々に楽しゅうございました……」
これ、本気かもしれん。
もしかすると本気で俺と付き合おうとしているかもしれん。
まさかそんなことになるなんて全く思わないじゃん!というか、この街に来てから今日で何日目?まだ一週間も経ってないのにどうしてこんなに色んなことが急速に動いてしまうの?
困惑気味のアウリエは腕すら組んできそうなリリーに怯える。
そこまでの距離感には慣れていなかった。
そもそも辺境の地で育った彼はあまり人にも慣れていない。
それが今度は異性だというのだからもう。それはもう心が裂けてしまいそうなほどにこの状況を“バクバク”した心臓で迎えていた。
リリーは動きやすい格好をしていた。
が、それでもそこに気品が見え隠れするのだった。
主に宝石によってその気品は構築されている。
首のネックレスや、指輪などが動く度に“キラキラ”と輝く。それは自然と周囲の人間を魅了してしまうのだった。とても魅力的に映っているのだった。
「これから、どこに行くのですか?」
「レストランでお食事でもしましょう?きっと楽しいですわ?」
「そうですね……って、なんか近づいてきてますよ?」
「おいおいおい!!ずいぶんと高そうな宝石を持ってるねぇちゃんだな!ちょっとそれ、くれねぇか?くれたら別にわりぃことはなんにもしないんだけどなぁ!!」
スキンヘッドの暴漢が三人。
三人とも体格がめちゃくちゃよいが、何者だ?
というか、なんか大変なことになってないか?
これは、俺が守るしかないヤツですね。幸いなことに今も木刀と鞘は持ってきている。だから、居合で敵を圧倒することくらいならば余裕なはずだ。
身構えたアウリエ。
その後ろに隠れるリリー。
二人の元に“ズシズシ”と音を立てて近づく似たような見た目をした三人。
お金持ちはこういうことがよくあるのだった。だから、ボディーガードを雇わなければならない。リリーがアウリエと一緒に居たいと思っているのも結局はこれがあるからだ。
「今ならまだ間に合いますよ?」
「なんだ?お前みたいな弱そうな奴が俺たちに敵うわけねぇだろ!」
「警告はしましたからね?」
「やれるもんならやってみやがれ!テメェになんか負けるか!」
どうやら俺は強いらしい。少なくとも、宮廷騎士団の団長よりは強い。それを考えれば、別にこの三人くらいなんてなんてことない。
俺は向こうが間合いに入ってくるのを待った。
その気配になにかを感じ取ったのか、中々近づいてこない。
それならばと思い、一歩を詰める。
すると、暴漢たちは一歩後ろへ引き下げる。さっきまでの威勢はどこかへ消えてしまっていて、もはや喧嘩を売られたような表情で焦っていた。
「止めるなら、今の内ですよ」
「……なんだと!?俺たちに指図するな!」
“ジリッ”と一歩近づく。
そして、一歩下がる。
「それなら、早くここまで来てください。もしくは、俺が近づいても逃げないでください。もっとリリーさんと一緒にこの場所を楽しまないといけないんで」
その一言でリリーは“ドキッ!”とした。
単に実力があるから付き合おうとしていた相手。
そんな人物から「楽しみたい」という言葉が出てきた。
吊り橋効果みたいなエフェクトの最中にあるリリーはその一言で心を奪われてしまった。なので、もう問題なんてどこにもなかった。
「コノヤロ……おい!お前から行ってこい!!」
「お、俺かよ!!」
暴漢の一人が男の一人を前へと突き出す。
そうして、アウリエの間合いに入った。その瞬間に、無数の斬撃が全身を襲うのだった。すぐに立てなくなって地面に横たわることになるその男。
それを見た二人の暴漢は唖然としていた。
そして、彼はその唖然としている隙を見逃さずに足を踏み込む。
その木刀の先で何度も何度も残った暴漢を斬るのだった。
口から血を噴き出しながら倒れ込んだ三人。一部始終を見ていた周囲の人たちから拍手が沸き上がる。その中心でどこかバツが悪そうに振る舞うアウリエだった。
「よ!彼氏さんスゴいじゃないか!」
「剣が全く見えなかったよ!どうやってるんだ!?」
「いいなぁ。あんなに素敵な人が彼氏なんて……」
彼氏ではない!!
まだ、まだ俺はリリーさんの彼氏にはなっていない。まあ、将来的に?もしも彼氏になれるようなことがあったらそれは幸せなことかもしれないが、でも別に全然彼氏なんかではない!
リリーは困惑しているアウリエの肩に頭を預けた。
それをされてからの記憶が全くないアウリエだった。
二人は意外とお似合いな感じだった。
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