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23 “イチャイチャ”できずに“ギクシャク”


考え事をしながら、無事にグレンの家まで到着したアウリエとリリーの二人。前と同じように鍵がかかっていない扉から勝手に入っていくその二人。

さすがのリリーのそれに少しは慣れ始めていた。し、慣れないといけないと思っていた。ここにおいておかしいのは自分なのだとちゃんと客観視することにしていた。


「ダメだ。やっぱり眠ってる」

「まさか今日来るとは思ってなかったんだろうね」

「俺がいなくなってからずっとこうなのかな?」

そうなると前は全然ちゃんとしてたということになるな。

あの時から怠惰な人ではあると思うこともあったが、本当はもっともっと怠惰だったらしい。つまりは俺の前でちゃんとした振る舞いを心がけていたということじゃ。


「どうしようかしら?」

「みんなを待たせてるから起こした方がいいんじゃない?」

「でも、そんなことまで気にする必要はあるの?」

リリーは従者に色んな事をしてもらうのが当たり前になっていたので、そこに感謝のような物は特にはなかった。まあ、従者も仕事としてやっていたし。


そんなリリーに違和感を覚えたアウリエ。

だったが、これこそが失敗の元だと理解した。

価値観の相違を容易につついてはいけないのだ。そこは意外とその人の本質的な部分だったりすることがあるので、できるだけ“そっ”としておいた方がよい。


「グレン師匠のことだし細かいことは気にしないよ」

「でも、私たち“イチャイチャ”を禁止されてるのよ?」

「それは……そうだね」

細かいことなんて気にしない人がやる行動ではないもんな、それはな。だから意外とグレン師匠も繊細な人なのかもしれない。今までそんなこと思ったことなかったけども。


起こすかどうかで迷っていた二人。

そんな二人の声で目の前の老人は起き上がった。

なので、二人の間に緊張感が走る。

もう“イチャイチャ”することはできないのだ。が、グレンにとってどこまでが“イチャイチャ”なのかまだ全然よくわかっていなかったので、二人とも“ギクシャク”するのだった。


「よう来たな。もう修行に入れるのか?」

「……あ、おはようございます。グレン師匠」

「……おはようございます」

「なんじゃ?どうしてそんなに違和感のある対応になっておるんじゃ?ワシがなんかしたか?というか、二人の間になにかあったのか?」


「グレン師匠のせいですよ!」とは言えない。

俺たちは目を合わせることすらできない。

二人とも相手が話をしている時にはちゃんとその目を見るタイプの人だったから、それができないだけでそれなりの窮屈感があるのだった。


「あ、ワシのせいか」

と、グレンは自分のせいであることに気が付いた。

「そうですよ!」とは言えないアウリエ。

意外とちゃんと師弟関係があるのだった。フランクに話しかけられる相手だからといって失礼なことを言っていいわけではなかった。


そこら辺はちゃんとしていた。

なぜならばここはかなりの村社会だからだ。

失礼なことをするとすぐに噂が飛び交う。あくまでも安全な範囲で仲良くするのがこの場所の掟だった。とはいえ、あまりにも人が少なすぎるので揉め事はほとんどない。


ちょっと前ぐらいはそういうのもあった。

が、あまりにも秘境的になりすぎてそんな余裕が誰にもない。

高齢化していることで外に出れない人も増えた。

話なんてしている余裕がないという現実的な問題がここにはあるのだった。それはそれは現実的な問題がこのアクリスタルにもあった。


「うーむ。どうするかのう。まあ、よいか」

グレンはこの空気を解決しようか悩む。

が、その結果、放置することに決めた。

やはりなんだかんだ言って“イチャイチャ”されるのは嫌なのだった。だから、それをされないようにここは黙っておくことにした。


「それで?食料も持ってきたんじゃろうな?」

「もちろんです。道場の方に置いてあります」

「そうか。それなら道場へ行くとするか。はぁ、その前にちょっとなにかを食べてもいいか?安心してくれ、食べ歩くからのう」


グレン師匠は布団から出る。

そして、冷蔵庫にあったベリー系が入ったカゴを取り出した。

それを抱えた状態のまま、俺たちと一緒に道場へ向かう。

その姿はやはり世界を救った英雄には見えなかった。明らかになんでもない老人の姿にしか見えなかったのだ。俺もずっとそう思っていたし。


人生って不思議なもんですね。

スゴくなさそうな人の中にもスゴい人がいるもんです。

もしかすると従者の中にも才能がある人がいるかもしれない。

が、彼らにはそういうチャンスも与えられないんだろうなぁ。俺はたまたまここでグレン師匠に出会ったからよかったけどさ。まあ、俺に才能があるのかは知らんが、てか、無さそうではあるが。


アウリエはこの世の無情を嘆いていた。やはり、人というのは生まれた場所と運によって成功と失敗が決まってしまうのか?そんな哲学めいたことを考えていた。

その一番の理由はリリーと話せないからである。話せないから、自分の中でくだらないことを考えるしかなかった。


ブックマークなどしていたただけると嬉しいです!

読んでいただきありがとうございました!

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