21 出発の準備
自分の努力に自信があるユーリはリリーのちょっとした発言に対して過剰に反応する。それに困惑するリリーとアウリエだった。
しかしながらユーリも自分の事を客観的に見れないわけではない。自分の怒りというのがどこか理不尽な物であることは理解していた。理不尽とか関係なくそうなるのは仕方ない状況ではあった。
いつもの訓練場は少し“ピリピリ”していた。
誰もがユーリの様子が変であることに気付いていたからだ。
いつもは冷静なユーリにも触れられたくないところがある。
それをアウリエとリリーに突かれたのでついつい激情的になってしまうのだった。そもそもそういう部分があるタイプだったが、理性で押さえつけていた。
「……すまないな。少し、感情的になりすぎた」
「私も要らない発言だったかも」
俺はなにを言えばいいんじゃい。
俺からなにか同情の言葉をかけるのはおかしい気がする。ユーリの悩みの種は間違いなく俺。そうでなかったとしても俺にまつわるあれやこれだ。
俺はただただ修行をサボろうとしただけなのに。
それなのにこんな姉弟喧嘩にまで発展してしまうなんて。
俺は一人っ子だからこういう時にどうすれはいいのかわからん。どうすることもできないので、ずっと突っ立っているだけの無力な俺がいるだけなのだった。
「私はやっぱり向こうに行くからね」
「わかった。それはわかった」
「ごめんなさいね。勝手なことを言って」
「いや、俺の方こそ勝手だった。どう考えてもグレン様からなにかを教わる機会なんて滅多にあるもんじゃない。それを考えれば、リリーが正しいよ。みんなも納得してくれる」
悲壮感すら漂うユーリ。
もうユーリのメンタルは“ボロボロ”。
それでも元気に振る舞おうとする痛々しさがあった。
それはみんなも理解していた。アウリエはどうにかしてこの状態を解決したいと考えていたが、彼にはどうすることもできないのだった。
「じゃあ、またね。もう準備ができたら行っちゃうから」
「そうか。アウリエ、一ついいか?」
「な、なんですか?ユーリ」
「お前であればなんの心配もないことは知っているが、リリーの事を頼んだぞ。俺よりもお前の方が強いのだからなにも心配は要らないだろうが、それでもよろしく頼む」
ちゃんと家族なんだな。
やっぱりユーリはリリーのことが心配らしい。
家族ってそういうもんだよなぁ。
俺の家族ってみんなあんまり俺に興味ないみたいだからそういうの忘れかけてた。あんまりこんなの言っちゃいけないけど、これもマナーの賜物だったりするのかな?
そうして、三人は別れた。
二人が向かっているのはリリーの家。
そこ準備をし、買い出しに行く必要があった。
グレンの道場に持っていくための食料を用意する必要があったのだ。とはいえ、すぐに向かうわけではなく、少しの会話が二人の間にはある。
「いやぁ、お疲れさま」
「そんなに疲れてないよ」
「そう?それならよかった」
疲れてるのは俺だけということですか?
もしくは、本当は疲れてるんだけど、疲れてないフリをしているとか?どっちかっていうと後者の方があり得そうな気がした。
でも、意外と疲れてない可能性もある。
もしかすると普段からああなるときがあるのかもしれない。
それでもう慣れているとか?
そう考えるとそこまで不思議でもないかもしれないな。まあ、でも、とにかく俺は疲れましたよって話でした。もう“クタクタ”。
これから買い出しに行かないといけないのも大変。
おそらく出発は明日になるんだろうけどさ。
こんなに疲れてるのに明日にはまた里帰り。
里帰りからの家帰りからの里帰りだ。どんな弾丸スケジュールを組んでるんだ?なんか俺って俺が思っている以上に体力あるかもしれない。
「それにしてもなにが喜ぶのかな?」
「ステーキの他には好きなものとかあるの?」
「甘い物は全部好きだと思う。全部ってことはないけど」
「じゃあ、そういうのもたくさん買おっか」
「そうだね。でも、グレン師匠からどんな物でも喜んでくれると思うよ。というか、あの場所って本当になんにも娯楽がないから、なんでも嬉しいと思う」
辺境の地はどこまでも辺境なのだった。
なので、食事はほとんど山菜やジビエばかり。
そんなのばかり食べてたら甘い物が食べたくなってしまう。
グレン師匠が異常にコーヒーと紅茶が好きなのって絶対にそれがあると思うんだよな。たまには都会的な物も食べたいよ!って反抗の証だと俺は勝手に思っていた。
二人はそれからも話をしていた。
その時間は二人にとって幸せな時間だった。
なんだかんだいって上手くいきそうな気配がしているのだった。こんなに即席の関係にも関わらず、普通のカップルのように振る舞うこともできていた。
ユーリは自分の気持ちを抑え、アウリエとリリーの言葉を受け入れることに成功した。なので、二人はこれからグレンの元で修行をすることになる。
とはいっても、それは別に厳しい物でもなんでもない。なんだったら楽しいだけの物だった。
よいお年を~。
大晦日なのでいいことがあるでしょ~。
(小説を消すこともあります)




