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13 『タルト食べる食べない問題』


『タルト食べる食べない問題』で、微妙に荒れる事になった二人の空気。そんな二人はグレンが起きてくるのを心待ちにしていた。

元々リリーとしては結婚する事になる可能性が非常に高い相手だった。だから、そこまでの不快感はなかったが、アウリエの方は自由恋愛を求めていたのでなんか“モヤモヤ”していた。


ここではそれが普通なのに。

別にグレン師匠もそれを悪いと思わないのに。

どうしてリリーがそんなことを気にするの?

まあ、俺が折れて食べない事にはしたけどさ?別に食べちゃってもいいじゃない?もしかして食べちゃったらよくないですか?俺が間違ってる?


まあ、ここは俺が我慢するとしよう。

どう考えても俺の方が身分は下だ。

あんまり逆らいすぎても面倒な事になるのは見えてる。

国を相手になにかをするのはさすがに面倒すぎる。騎士団長の姉と揉めたなんてあまりにも響きがよくなさすぎるのだ。それは止めといた方がいい。


重たい空気の二人。

なにも話す事がない。

しかし、そもそも話す事なんてなんにもないのだった。

なので、タルトの問題があったからこうなっているというよりも、そもそもあんまり仲良くない者同士が一緒に居ることの問題が出てしまっている。


リリーはちゃんと惚れさせるつもりだった。

が、アウリエが焦って告白を受けてしまった。

だから中途半端に心を許すことによってお互いが素になろうとしているのになりきれない微妙な空気ができてしまっているのだった。


「なんじゃ、お主ら。変じゃと思って来たら」

「グレン師匠!起きたんですね!」

「起きとるじゃろ。逆に寝てるか??寝てるように見えるか?」

「そうでした。すみません、あの、別になにかがあったわけではないんです。なので、ご心配は要らないです。ありがとうございます」


怪訝な顔をしたグレンが部屋に来た。

それを受けてすぐに挨拶をするアウリエ。

別に挨拶が徹底されていたからそうしているわけではない。

シンプルに気マズすぎたからそうしているだけだった。普段はもっと適当な感じだったが、ついついそれっぽい感じで接してしまった。


それを見て(やはりそうなのか?)と思うリリー。

(やっぱりちゃんと師弟関係があるのか?)

そんなことを思うリリーだった。

それによってまたさっきの行為の印象が悪くなる。もう心を殺して夫婦生活を送る覚悟さえできていた。が、まだそこまでではなかった。もしかするとそうなるかも?と思うだけだった。


「なんだか大変そうじゃな。タルトは?」

「……た、タルトの話は……」

「なんじゃ?ワシへのお土産を理由に揉めとったのか?」

「その通りでございます。なんか申し訳ないです」

絶対に普段の俺じゃない。こんなの見せちゃったら逆に変な誤解をさせることになる。俺は誤解を解くためにここに来たはずなのに、誤解を深めることになったら意味がわからない。


「それで?どういう二人なんじゃ?」

「それは……」

「結婚を前提にお付き合いしている方です」とは言いにくかった。

そんな感じの空気ではなかったからだ。でも、それを言わないとそれはそれでまだ関係がダメになっていく感覚がある。これはもう泥沼だ。人間関係ムズすぎるだ。


「なんじゃ、なんじゃ?どう考えてもただならぬ関係じゃろ?」

「それはそうでございます。ただならぬです」

「というか、なんか堅苦しいな。お菓子でも食べるか?」

「いやぁ……お菓子とか食べてる場合じゃないかもです」

お菓子を理由に喧嘩になりそうだったアウリエはそれを避けようとする。が、客なのにもてなしを受けようとしないアウリエにも少し腹が立っていた。


生まれた場所が違えば常識も違う物だ。

常識が違う二人はぶっちゃけ合わないところもあった。

でも、政略結婚なので仕方がない。

「なんじゃかよくわからんのう。肩を力を抜けよ。どうせ緊張してもなんにもいいことなんてないからな。これはマジじゃぞ」


もうさっきからずっと師匠が師匠をしている。

「もうワシが用意するから。どっちもコーヒーでいいな?」

「あ、ありがとうございます」

「ご馳走さまです」

「もう面倒じゃからコーヒーと一緒にそのタルトを食べるとしよう。どうやら不吉みたいじゃし消してしまうのが正しいじゃろうな」


グレンはコーヒーの準備を始めた。

起きてもなおまだ緊張感がある二人。

起きたら解決する問題だと思っていたが、そうでもなかった。

ぎこちないのには色んな理由があった。が、その中でも一番大きいのはやはりサボり疑惑だ。アレだけのことをやっている人間が修行を終えることができないことに対する疑心感だ。


でも、そんなの本当なのだから仕方がない。本当に能力がなくて修行を終えることができないわけだし、本当に実力があるから兵士たちを瞬殺することができる。

それが両立するというイメージが彼女の中にはなかった。強いのに弱いというのはあまりわかってなかった。なので、どうしてもアウリエのことを信じられないのだった。アウリエは信じてもらおうとするのだった。


もう少しでお正月!

お疲れさまです!

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