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11 引っ越したい


修行なんてできるわけがない俺。とりあえずやってみた修行によって体が“ボロボロ”になってしまった俺は考えた。一度、リリーを連れてアクリスタルへ戻ろう。

そしたらきっと向こうにも事情がわかってもらえるはずだ。俺がめちゃくちゃに緩い修行をしていたことを理解してもらえれば、なんとかなる気がする。


もはやリリーにすら疑われてる気がする。

だから、その誤解だけは解かないといけない。

そのための手段は一つだ。

グレン師匠のところに行くことより他にはない。本当に結婚するのであればどうせいつかは向こうに挨拶に行くことになるのだ。それならば早いとこ行っておこう。


「リリー。ちょっといい?」

「どうしたの?アウリエ」

なんか緊張するな。

しかし、どこか俺のことを疑っていそうなリリーの顔。

それを見てしまうとどうしても行動しなければならなくなるのだ。ここで彼女にまで嫌われてしまったらもうどうしようもなくなってしまう。


「実は、一回地元に帰ろうと思ってるんだよね?どう思う?」

「それもそうね。挨拶に行かないといけないものね?」

「そう。もしも予定が空いたら行きたいと思うんだけど、どうだろ?」

「い、行きましょう!?行きましょうよ」

なに?なんだその「い、」ってヤツはなに!?もしかして本当に結構疑われている?俺が思っているよりも引かれている感じがして恐ろしいのですけど。


実際に、アウリエが思っているよりも疑われていた。

そして強さに引かれていた。

なので、彼がやっていることは正しかった。

早いとこ種明かしをしてしまわないと一生の問題として立ちはだかることになるのだ。しかしまあ、恐らくはもうなんの問題もないだろう。


「では、ユーリにも話をしないといけないわ?」

「そっか。じゃあ、二人で行こう。騎士団休まないとだし」

「そうね。でも、きっと休ませてくれるわ?」

休ませてくれるのかな?

俺はまだあの人がそんなに優しい人だとは思えていない。というか、正直怖い一面しか知らないからこれからのことがめちゃくちゃ怖いんだよ。どうなっちゃうんですか?


そんな思いを抱えながらユーリの元へ向かう二人。

その途中に会話はなかった。

言うてまだ仲がいいわけではない。

リリーも少しずつではあるが政略結婚の恐ろしさを理解してきた。全く気が合わないかもしれないような相手と一緒にいないといけないということの恐ろしさに怯えてしまっていた。


「――というわけで、いいですかね?」

「いいぞ。本当は俺も行きたいくらいだが、二人で行けばいい」

「ありがとうございます!よかったぁ」

「後、その敬語はいつになったら直るんだ?」

俺はどうしてもユーリの威圧感に負けて敬語になってしまうらしい。年齢的にどっちが上なのかは知らないが、なんか雰囲気的にはユーリの方が上に見えるし、これは仕方がない。


「グレン様に話を聞いてみたい。代わりに聞いてくれないか?」

「な、なにを?」

「そんなの決まってるだろ。強い兵士の作り方だ」

「あぁ、そうだね。やっておくよ」

「どう考えてもおかしいとしか思えない。アウリエが嘘をついていることを疑っているわけではないが、どこかになにか秘密がないとこんなことにはならないはずだ」


「疑っているわけでは」あるでしょ?

まあ、そんなことを気にしてても仕方がない。

許可をもらえた俺はアクリスタルへ帰ることになる。

なんだかとても懐かしい……とっとと帰ってまた平和な日常を取り戻したい。もうこんなところで地獄みたいな修行をしていたらいつかおかしくなってしまう。


「よかった。これでみんなに会わせられる」

「楽しみだわ。アウリエ。でも、グレン様に会うなんて緊張する」

俺も世界を救った英雄だと知っていたら緊張しただろうな。

「そうだね。まあ、グレン様は優しい人だから安心していいよ?」

優しいのにちゃんと成長させてくれたなんてほとんど神様みたいなもんだな。どうやったのかは俺にも全然わかってないけど、どうやらそれをする方法はどこかにはあるらしい。


「どんな人なのかしら?」

「とにかく優しいというか、本当に甘い人なんだよ」

「甘いの?」

「そう。俺なんて午前の“ギリギリ”にしか道場行ったことないし」

早起きなんて全くしたことない。ここに来てからほとんど毎日早起きをしているわけだけど、そんな面倒なことは向こうでは全くなかった。


本当に魔法使われてるのか?って思うほどだ。

そう思ってしまうほどになにもしていない俺は強くなった。

それのせいで発生した問題もあるけど。

てか、よくよく考えたらリリーさんと結婚を前提に付き合ったこと以外はなんにもいいことないな?俺別に誰かに勝ちたい欲とかもないし。


シンプルにずっと楽しかっただけだからな、向こうでの生活って。て、事を考えるとやっぱり向こうに住みたくなってしまう。

どう考えても俺にはこの国があってない。もっと、自由で、人がいなくて、誰かに責められることもなくて、豪華なところなんてない場所で静かに暮らしたい。


興味を持ってくださり本当にありがとうございます!

よいお年を!

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