輝け
学生時代、一度は転校したことがあるだろうか。転勤族の息子にしてみれば当たり前のことではないだろうか。僕は東京の都会の中の都会で生まれ育った。友達もいるし、先生も優しい。山なんて1か月に一度ビルの上から見るぐらいの都会っ子であった。
ある日突然部活から帰ると父が重い口調で
「話がある」
と言いながら僕のカバンを隅に寄せた。マンションのベランダから見えるビルの数々は逆行で黒く染まり空は美しく輝いていた。
「父さんが地方事務所の所長になることになったんだ。」
「それで、父さんはどうしてもここを離れなくちゃならいけど...」
「別にみんなで引っ越そうといってるわけではないんだが」
いつものように物事をはっきり言わないのにはあきれたもんだと思いながら私は
「それで?」
と尋ねると
「父さんと一緒に暮らしたいか、それともこのまま東京で暮らしたいか。」
そう聞かれた。もちろん僕は物事をはっきり言わない僕の父が好きである。だから
「一緒に暮らそう」
そんな風にはっきりと答えた。
翌日から引っ越しの準備は着々と進んだ、引っ越すのであればもっと先に行ってくれればいいのに、なんて思った。
いよいよ東京の学校に来るのは最後になった。その日は午前授業で最後の日だからと、みんなは寄せ書きを書いたり、ドッチボール大会を開いたりとサプライズをしてくれた。僕は涙が出るほどにうれしかった。普段二軍男子くらいで特定の友達と遊んでばかりの私だったが性格はよいといわれていたことが報われたのだと思った。
最後に
「ありがとう、ありがとう」
そういいながら学校をさった。それから何時間も車に揺られながら走った。窓の外には美しい夕日に揺れる道路わきの草花が見える。新しい建物も古い民家も同じように夕日に照らされ、田舎の空気を満喫してこれからの暮らしに期待を寄せた。
引っ越し先は鮮やかな海が見える小さな町で、夜になると近所の人がまたやってきて学校のことについて尋ねた、そこで僕は隣の席に座っている人のことについて尋ねると案外近所であると話した。
次の日、学校で昨日新しくできたと友達と仲良く話してたのだが、その子曰く、クラスには学年一の不良がいてそいつに目を付けられると学校生活が送れなくなると話してくれた。恐ろしかったが、どの学校にも一人は異端児がいるものであると思っていた僕はそこまで重いものだと思わなかった。
次の日に、僕は一人だけ放課後に呼び出された。異端児の不良仲間が
「先生が体育館で君を呼んでいる」
といって僕の手を無理やり取って体育館に連れて行った、何かおかしいと思ったが僕は少林寺拳法の東京都代表だったため武力には自信があった。体育館に行くと金属バットを持った異端児が居座っていた。彼は僕の顔を見るなり
「東京もんは生意気だな。」
そういってきたんから
「田舎もんとあまり変わらないでしょ、遊ぶ場所なさそうだし、太ってる子供多いし」
そういうと異端児はバットを振りかざしてきた。僕が気づいていたときに立っている人はたった一人だった。