手野グループ事変宣言
何もない、平和な日になるはずだった。
春雷会へ一本の通知が来るまでは。
電話の主は、手野武装警備の武装社長だった。
「はい、春雷会事務長です」
「ああ、俺だ。武装社長だ」
滅多に来るはずがない相手からの電話。
そのとたんに何かとんでもないことが起きたっていうことだけははっきりとわかる。
平日の昼間。
ちょうど午後1時半くらいになったときのことだ。
「アメリカに行っている特派員から連絡があった。テック・カバナーの家に不幸があったそうだ。詳しいのはまだ何もわかっていないが、交通事故らしい。速やかに情報収集と、ご当主に連絡をしてほしい」
こういうときの連絡のやり方は全てあらかじめ決められている。
だから武装社長は自分へと連絡をくれたということらしい。
「承りました。すみやかに伝達します。事変宣言は発出しますか」
「よろしく頼む。併せて、春雷会のメンバーの招集も。彼らにも動いてもらわないといけないだろうからな」
「では、速やかに連絡します」
メモ帳の1枚をちぎり、近くにいた事務員の一人へと手渡す。
みるみる顔が変わっていき、あっというまに一斉送信のメールを打ち込み始めていた。
これをもって手野グループ事変宣言がなされることとなる。
そして自分の平和な日々も終わりを迎えた。




