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3

先程の余韻に浸っていたら気がつけば日は傾き、空は青から(だいだい)へと、変わり始めていた。


誰かが歩いてくる。


『カツッ、カツン』というヒールの音。


女の人だろうか。

俺は咄嗟に両手をポケットにつっこむ。


音のなるほうを向くと、そこには美宵がいた。


爪が剥がれた部分の皮膚と布が擦れて、痛みが強くなってゆく。

今はそれさえも心地いい。


そして、さりげなく手すりに寄りかかる。



「どうした?」



少し微笑んで、まるで子供をあやすような優しい口調で俺は尋ねる。


美宵は敬語ではない俺に驚きと喜びを混ぜたような表情を見せた。


「さっきまで、友達とご飯食べたりしてきたの。で、今は帰り」


「そうか」


お酒を嗜んできたのだろうか、頬が少し上気している。


「大丈夫か?女性が一人こんなとこ歩いてて。親に迎えに来てもらえばよかったのに」

「本当はそのつもりだったんだけど、断ったの。ここに来たら()がいると思ったから。なんとなくね」


なんとなく嫌な予感がした。


「私ね、旭が好きだよ」


やっぱりそうだ。


美宵が真剣な顔でこっちをみる。



「だから、ごめんさない。中学の時助けられなくて」


美宵が悔しそうな顔をする。

まるで善人みたいだ。


「いいよ、別に気にしてないし」


俺があっけらかんと言うと、美宵はぽかんとしている。

俺が、怒るとでも思ったんだろうか?


「そ、そう。良かった。」


許されたことにまだ実感が湧かないみたいだ。


「そうそう、暇なときでいいからさ桜華の家庭教師やってくれよ。美宵、頭良かったろ?」


「あ、うん。いいよ、それくらいなら」


「あと、『おまえのオムライスは世界一だ』って桜華に言っといてくれ」


「? わかった。じゃあ、またね」


そう言った美宵に「気をつけて」とだけ言って別れた。


でも、告白された返事を忘れていたことに気がつき、美宵と叫んで、


「俺も、お前のこと好き()()()よ!」


と返事をした。


表情は見えなかったが、

「ありがとっ!!」

とだけ言って帰って行った。


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