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三浦カスミは信じたい。  作者: 高田祐樹
2/3

第2話 今すぐなんて信じない。

前回、入院中に謎のライトノベルを渡された三浦カスミ。

面会時間外に現れたアカネに説明されて

異世界は、異世界転生は存在すると伝えられた。

「そんなの君に転生してもらうからだよ!」


さも当然みたいに言うアカネに私は聞く。


「え?今すぐ転生?」


「そうだよ」


ちょいちょいちょいちょい。

タイミング早すぎんよカスミさん。


「ちょっと待ってよ!」


私は叫ぶ。


「いくらなんでも早すぎだよ!しかも、なんで私!」


実際私なのはなんでだろう。私以外でもトラックに轢かれたり通り魔に刺される人はいっぱいいるんじゃなかろうか。


いっぱいいてたまるかって感じだけど


「なんで私って、異世界行きたくないの?」


行きたいけども!そうじゃない!


「私を選んだ理由!そこを教えてほしいの!」


「そんなのないよ」


え?


「しいて言うなら私の近くにいる異世界に行きたい人間がカスミ君しかいなかっただけだよ。」


そんな理由で......少し悲しいよ私は。


「んじゃ転生させるけどいい?」


はやいな~。展開が。


「......正直言うと、少し怖い。」


「だろうね、転生したら今の肉体死ぬもん。」


うそぉ!聞いてないよ!


「初耳なんだけど!聞いてないよ!」


「言ったじゃん、今。」


それじゃ遅いんだよ、カナエ。


「そんじゃ転生させるよ~。」


「ちょっと待ってよ!まだ聞くことは沢山..!!!」


そこで私の意識は途切れた、プッツリと。

暗闇の中、私は歩いている。

これは夢だと直感的に気付いた。なぜかは知らない。

そのうち歩いているとカナエが見えた。

手を振って何かを言っているのはわかるが声は聞こえない。

だけど、なぜか。

「こっち、こっちだよカスミ!おいで!」

と叫んでいるように思えた。

最後まで親友のカナエを感じることはなかったけど

それは逆に幸運だったのかもしれない。

私はカナエがいる方向に向かって歩き出した。

いつもの私だったら、あえて逆方向に進むのに

なんで今回は素直に歩いたんだろう。


とかなんとか考えてるうちに光が見えて、また意識が途切れた。



「知らない空...とか言ってる場合じゃないよねぇ...」


現実世界の私は死んだのだろうか。

カナエが言っていたのだから真実なんだろうけど

実感が湧かない、そりゃあそうだけど。


いったいここはどこだろう。

森の中、木々のせいで空は少ししか見えない。

こんなことなら「知らない森だ...」とか言えばよかった。       

そんなこと考えてる場合じゃないんだよ!


「ハローカスミ、聞こえてるかなぁ?」


と頭の中にアカネの声が響き渡る。

こいつ...!直接脳内に...!


「ヘイヘイ、変なこと考えてるんじゃないよ。」


どうやら考えていることはお見通しのようだ。


「ここは大樹の森、その名の通りあたり一面が50Mは超える大樹で囲まれている森さ。」


かなりファンタジーな森と名前だった。

樹海とかいう名前だったら少しはマシだったが

本当に異世界に来たのだという実感が少し湧いた。


「今向いているほうに歩き続ければ、日が落ちて少ししたくらいには街につくよ。」


太陽は真上に見える。単純計算で5~7時間は歩くだろう。


「最初に行く街の名前は【ハーディス】

 この世界の英雄が生まれ育った街と言われているよ 。」


大体そういう街の伝説って......


「その通り!転生者だよ、その英雄ってのは。」


ですよね~。

異世界の英雄は大体転生者ってのがお決まりなのよ。


「さて、最初の敵のお出ましよ」


何を言っているんだと思っていると、後ろから音がした。

犬...というよりはオオカミに近い。

牙を見せ唸り、だれが見ても威嚇してるように思えるだろう。


「さぁ逃げよう!捕まったら喰われるぞ~。」


アカネはそんな絶望的なことを、明るい口調で言った。


「聞いてないですぅぅぅ!!!!!!」


「あああああ!!!」と、叫びながら走る。

走る、走る、走る。ひたすら、がむしゃらに走る。


「ヘイヘイヘイ!その調子だとあと10分もしたら追いつかれるぞ~!!」


アカネうるさい!!!そんなの分かってる、分かりたくないけど!!!!!

走り始めて約10分。体力はあるほうだけど20分以上走れる体力はないし、足も痛くなってきた。

森の中。整備された道などなく、折れた木の枝や木の根はそのまま。

そんな状態で10分も走ってたらそりゃ足の一つも痛くなる。

幸いなことに、昔パルクールをやってたおかげか、少しは逃げやすいものの、こんな状況を想定してパルクールの練習をしていたわけじゃないので想像以上にきつい。

後ろを振り返ると、オオカミは最初より近づいていた。

少しづつだが、確実に距離を詰めてきている。


「後ろばっかり気にして大丈夫か~?」


アカネが声をかけてくる。

ハッとして前を見ると、道が途切れていた。


「うわあぁぁぁ!!!」


急ブレーキをかける。私は崖ギリギリで止まる。

前は崖、後ろはオオカミ、絶望的状況だ。


「喰われる...!!!」


死を覚悟して、目をつぶる。



だが痛みが来ない。私は目を開けた。

オオカミは、その場で止まって、威嚇していた。

道が途切れていることに気付いているのだろう。

飛びつけば、私もろとも落ちる。理解しているのだろう。

理解したうえで、私をどう屠ろうか、喰らおうか考えているのだろう。


逃 げ る の は 今 し か な い 。


でもどうやって逃げる。どうすれば逃げられる。

アカネさん、教えてください。


「頑張ってね~。」


アカネさんにはもう聞きません。

さぁどうしようか。


「崖の向こう側、カスミならギリ届くんじゃない?」


何を寝言を言っているんですかアカネさん。

と、思って振り返り、反対側を確認した。

約3m強、助走がないとまず無理な距離だ。

一番幅が狭くても2m50cmはあるだろう。

一番幅が狭いところまで2mちょい、そこまで走って飛んだとしてまず届くのか?

考えていると、オオカミが吠えた。

大きく吠え、それはまるで仲間を呼ぶようだった。


まずいまずいまずいまずい!

仲間を呼ばれたら、私に助かる道はない。

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