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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

寄りにも寄って主人公! ~ハッピーエンドのアフターストーリーで破滅確定の主人公は前世を思い出し絶望する~

相も変わらずひねくれ者な作者らしいひねくれた内容です。

 寄りにも寄って。

 正に自分は今、その言葉通りの事態に直面している。

 目の前に移るのは一つの光景。そこには――


「リディア・シュタイン! 貴様の悪事は分かっている! 貴様のような毒婦を国母にするなど以ての外!! 故に貴様との婚約を解消し、貴様に国外への退出を命ずる!!」


 ビシィ! とか、ドン!! とか効果音でも付きそうな発言をしているイケメンがいた。そして自分はその顔に身に覚えがある。二つの意味で。


 一つは自分の前世で見た顔だった。主に二次元関係で。そしてもう一つは……


「この私の隣に立つのは、心優しい彼女――アイラ・ノビエフ以外に他ならない!!」


 私が他ならぬ、今言われた名前――アイラ・ノビエフ本人だから。

 そう、私は前世でやっていたゲームの主人公に転生したのだ。そして今、前世の記憶を取り戻した。


 寄りにも寄って……あの…あの!! 製作者は根性捻くれていると言われている【Mediocre Life】の主人公に……!!!


「冗談でしょ…」


 なんで主人公なんだ。前世思い出す系とか基本悪役令嬢だろうに。


【Mediocre Life】はジャンルで言うところの乙女ゲームだ。ぱっと見、特におかしいところは存在しない。攻略時の選択肢が捻くれているとか、そういう面倒くさい要素は無い。基本的には。

 ルート分岐も分かり易いし、攻略も正直簡単だ。だがしかし、このゲームが製作者の根性捻くれていると言われたのはあることが理由だった。

 このゲームの発売前に公式が公式サイトでこう明記したのだ。『このゲームのプロローグから共通ルート以降のネタバレ、動画サイトでの配信など、ネタバレにつながる行為を、固く禁止します』と。

 当初はこの一文になぜ? となったプレイヤーは多かった。とはいえ、この作品以外にもネタバレ禁止にしているゲームは他にもあるのでまぁ、いいか位の感覚だった。

 そして発売されてそのゲームをやった私も当初はこう思った。立ち絵もスチルも悪くない、でもネタバレ禁止にするようなものとは言えない、と。

 内容は正しくThe・ありふれた乙女ゲーム。これに尽きる。そう思った。思っていた。

 だが、このゲームの攻略対象のハッピーエンド、バッドエンド、そして誰のルートも通らずエンディングを迎えるノーマルエンドを制覇した後、ふとあることに気が付いた。

 タイトル画面のオプション画面、そこには既読率やスチルの制覇率などが%で表記されるのだが、どちらも100%ではないことに気が付いた。

 既読率ならまだ分かる。大方どこかの選択肢で選んでない奴があるのだろう。だが、スチルが100%になっていないことには首を傾げた。すべてのエンディングを見たはずなのに、何故? と。

 気になり、もう一度最初からプレイして……驚いた。

 このゲーム、どうやら全てのエンディングを制覇すると、エンディング後に、それぞれのルートのハッピーエンドの後日談…所謂アフターストーリーが見れるようになるのだ。

 だが、私はそれを見て思った。このゲームの製作者、絶対に性格悪い、根性捻くれていると。

 何故ならそのアフターストーリーに描かれていたのは…主人公のとんでもない『末路』だったからだ。


 どのルートでも、主人公は碌な目に合わないのだ。宰相子息ルートは段々仕事一筋になっていく旦那に対し、孤独を感じるようになり不貞行為に走るわ、騎士団長子息ルートはある日戦闘で利き腕を負傷し騎士を続けられることができなくなった結果荒れ始めた旦那と喧嘩になりカッとなった旦那に殺されるわ…


 一事が万事、そんなのばっかりなのだ。

 王子ルートに至っては、王子はどうやら釣った魚に餌をやらないタイプだったらしく、どんどん自分に対して関心を無くして側室だらけにするわ、挙句王を堕落させた毒婦と周囲に呼ばれて病むわ、最後には杜撰な政事が災いして隣国に攻め込まれて断☆頭☆台である。ハッキリ言おう、ざけんな。


 そして、そしてだ。何よりも大事なのが…今、私は、その王子ルートを通っているということである。しかもハッピーエンド確定。

 なんというクソゲー。人生はクソゲーとはこのことか。こんな結末知らない! いや知っているけども! やり直しよ! やり直しを要求するわ! リセットボタンはどこ!? 

 思わずそんな感じに発狂してしまいそうである。寧ろ発狂できるなら発狂したい。


 ノーマルエンドならよかったのに。このゲーム、あのアフターストーリーで唯一のハッピーエンドなのがノーマルエンドなのだ。主人公は普通に卒業して、普通に昔からの幼馴染と婚約して、普通に嫁入りして普通に貴族の奥さんやって子供も生まれて幸せなのだ。

 もっと言えばこのゲームのタイトルは和訳すると【平凡人生】である。クソが。タイトル通りにしてりゃ平凡どころかハッピーエンドだったのに!! タイトルが事実上のネタバレである! もう一度言おう、クソが!


「さぁアイラ。こちらへ。これからも私の隣にいてほしい」


 とか何とか考えていたら餌やらない浮気男が何か言っている。というか婚約しているのに他の女に現を抜かすなよ。

 ふと、浮気男ではなくその男の最大の被害者である彼女――とどのつまり悪役令嬢リディアを見る。


 oh……。完全に冷めた視線を向けている。寧ろごみを見る目でいらっしゃる。

 あ、因みに彼女にもアフターストーリーがあったりする。王子ルートのアフターストーリーを見た後もう一度王子ルートをやると見られる。

 因みに彼女のアフターストーリーを見て(ようや)く制覇率が完全になる。既読率スチル制覇率ともに103%でな。

 このゲーム、一昔前のゲームみたいにマックスが100%じゃなくて103%なんだよ。彼女のアフターストーリーを除くと100%になる。そのせいで彼女のアフターストーリーに気が付かないプレイヤーが続出した。私もその一人だ。ネタバレ全開の公式ガイドブックを気まぐれで買って読んで初めて気が付いた。

 で、その内容というのがまぁ、彼女は幸せになった、というものだ。婚約破棄され国外追放された彼女は隣国に渡った。その国は彼女の家庭教師をしていた人の出身国だった。彼女の手引きで隣国に恙無く渡り、働き始めた。国の政とは関係ない、住み込みの料理屋の給仕の仕事だった。彼女は真面目に働いた。元々国母になるために様々な教育を受けてきた身だ。その国の言葉の読み書きに礼儀作法、計算など普通にできるし、貴族界特有のギスギスした感じに比べればどうってことは無かった。寧ろ心地よささえ感じていたのだ。

 そしてそんな日々を送っていたある日。一人の男性に告白され、やがて結婚。一人の女性として幸せをつかんだのだ。その時のスチルがまぁ、良い。彼女は本編の最中基本的にキリっとした表情というか、あまり感情の変化が乏しい感じだった。今にしてみれば、未来の国母として、何よりあの王子の婚約者としてしっかりしなければいけなかったのだろう。しっかりしなければいけなかったのだ。公式ガイドブックでは実際王子ルート以外では立派に国母になっているらしく、後世でダメな王に代わり国と国民を支えた優秀な王妃として語られることが書いてある。というか王子ェ……。

 ともあれ、そんな彼女が心からの笑顔を見せるそのスチルは本当に良いのだ。実際あのスチルを見た時この子はこんな風に笑える子だったんだな、って思ったくらいだ。国のために民のために、それを必死に封じてきたのだろう。自分を律してきたのだろう。それもこれも……


「さぁ、アイラ。この手を取ってくれ。もう君を苦しめる奴はいなくなる」


 この王子(救いようのないドアホ)のせいで。

 現在進行形で国の未来を苦しめまくっている奴が何をほざくか。

 それはともかく…。逃げなければ! いや、というかどうにか今からでもバッドエンドに持ち込めないだろうか!? 無理? 無理だよね…そうだよね。バッドエンドの要素が無いからハッピーエンドなんだし

 …。結果的には断☆頭☆台(バッドエンド)になるけど。寧ろ死ぬからデッドエンドでは…?


 とか何とか考えてたら手を握られてるーー!?


 ヤバい! なんとか逃げなければ!

 周囲を見回して何とか方法を探ろうとして――ふと、リディアを見ると……


「……フフ…」


 コイツ…笑ってやがる……!? まさかコイツ、私が苦労すること見越してやがる!!? そうだよな!? よくよく考えればアレの婚約者だったんだしコレの本性知ってる筈だし!? ていうか――


「あんたまさか転せ「アイラ」…はい!?」


 私の言葉を遮られる。邪魔すんなよ!?…って?!


「私と君の愛を周りの連中に見せつけてやろう」


 とか何とか言って目を閉じて口を塞ごうとしてくる王子(クソ野郎)。おいバカやめろ、これはただの公開処刑だ。っていうか…


 誰か助けてーーーーーー!!!?




 to be continue……?


ハッピーエンドだからってその人生の最後までハッピーなわけではない。時には不幸なこともあります。ちょっと断☆頭☆台に登るとかね♪

因みに主人公の前世は特に語ることは無いです。普通に生きた普通の女性、みたいな感じです。……普通とは?ウゴゴゴゴ……。

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