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最後の殺人

『ふー。しかしこれで俺もこの船のオーナーという事だ。』

正直、船長にはこきつかわれていただけだったから。


しかし、こんな逃げ方をしたのだ。

正規な航行は難しいだろう。

いや、逃げ場はあるか。


手土産はなんせあるのだ。

そこに戻れば良い。



『腹が減ったな。』

一旦船を止めて腹ごしらえをすることにする。

大したものは作れないが、キッチンの食材はそれなりのものがある。


『七面鳥とワインで乾杯したい気分ではあるが。』


給仕にはいてもらった方がよかったのに。

いったい誰が。


キッチンにつく。


『まあ、、ペペロンチーノくらいなら手軽か。』


ニンニクを剥き、オリーブオイルで温めだす。

『この匂いでワインが飲めるな。』


赤ワインを開けて、舌鼓を打つ。

疲れているからか一気にアルコールがまわってくる。



その時であった。

船が動きだす。


『な、なぜだ・・・??』

火を止める。


リボルバー式銃を手にする。

俺以外はいないはずなのだが・・・。

船長の言っていた遺言?

やはり、幽霊か何か取り憑いているのか??

遺言は予定通り執行されるのだろうか。


キッチンを抜けて、操舵室への階段を上る。

冷や汗が額をつたう。


ジャキ!


銃口を操舵室に向ける。


・・・。

・・・・。

誰もいない。



『はあ・・・。』


銃を机に置く。

船を止めよう。燃料も余裕はない。


操舵室から甲板に出る。

潮風が頬を撫でる。うみねこは今日もうるさく鳴いている。


海面を見る。


船の縁へ向かったのが、失策であった。

体が傾く。

何が起きたのか。

海面が近づく。

刹那。海に沈む。



『く、くそ!』


海面から顔を出し、船を見上げる。

『お、お前は・・・・・。』


船に上がるには・・・。

方法が・・・ない。


しかも海のど真ん中。陸はない。

水に浮くものもない。


船はどんどん遠ざかる。

航海士の制服はどんどん水で重くなる。

『がはっ、がはっ!』


力が抜けていく。

体温も奪われていき、

意識が遠のいていく。





遺言はやはりフェイクじゃないか。

俺の死因は溺死でなかったはずなのに・・・。


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