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聖女殺し

『シスター、実はですね。私の仲間に、治療を得意としているものがいましてね。』

『ほう。それは、それは。どのようなものかな。』


『こちらにございます。』

ナーニャのおでましだ。


『この者は、私がお売りした奴隷ではございませんか。』

『いえ、今は仲間にございます。』


『そうですか。しかし治療に精通していると。』


『はい。治療魔法の使い手にございます。』


『なるほど。教会のためになるとはどのようにでしょうか?』


『教会には悩める者の他にも、体を患う者も多く来られると聞きます。いかがでしょうか。治療も出来る教会ではあれば、村人の信仰も深まりましょう。』

『それは、良い話でございますね。して、どのように分配なされるおつもりでしょうか?』

『いえいえ私は教会、ひいては村民の為に仲間に協力を仰いでおるのです。私めが、何をいただくことがありましょうか。』

『ああ、なるほど。では、治療費用はこのお仲間様の報酬と致します。』

『ええ、治療魔法は貴重でしょうから。では、ナーニャたまに様子を見にくるけどあとは頼んだよ。』


『マサチカ、分かったわ。』


ナーニャは返答する。



♦︎


『ああ、治療師様、ありがとうございます。我が子の怪我を治していただきまして!』


『素晴らしいわ。これで父も元気に働けますわ!』

ナーニャの治療は大変評判だ。ナーニャもこれだけ人に感謝されているのか、自信に満ちた顔つきだ。ナーニャの治療魔法はその症状や怪我をそのまま患者から引き継ぐので、一日あたりの件数をおさえてるのと、重症化するものは抑えている。

あとは慢性化するものの、断っているが、

それでも村人からのナーニャに対する信頼はこの数週間でかなり厚くなった。

教会の方もだいぶ潤ったようだ。


『ナーニャ、大丈夫か?』

『うん、すこし体調崩しがちだけど、マサチカが用意してくれた薬草とかで長引かないようにしている。』

薬草の類いは常に買い付けを行い、ナーニャの治療に活用している。


さて、そろそろか。


『クレア、催眠魔法の準備は大丈夫か?』

『うん、いつでも大丈夫よ。そんなことより、、』


クレアは肩を抱き寄せてくる。自分のバストを押しつけて誘惑してくるが、今はそんなこと興味がない。


『クレア、まだダメだ。というかこれから作戦実行だ。』

『えー。ケチ。私は、私はマサチカをこんなにも愛しているのに。』


目が見開き、口からはヨダレがたれている。

発情期の犬か。


どこまで惚れやすい女なのだ。というか気持ち悪い。


♦︎


『今日は休診なのかー。』


教会前にはナーニャの治療が休みである看板が立っている。


民衆からは残念がる声がする。


『おーい、あっちにナーニャ様がいるぞ!』

という声が発せられた。


ナーニャには、宿屋の前にいてもらった。

木箱の上に立ってもらう。



ナーニャが来た民衆に話す。


『皆様、今日私は残念な一つの事実をお伝えしなくてはなりません。』


ナーニャは自分の治療魔法の自身が受ける代償について話す。


『この数週間は、こちらにいる、マサチカとクレアに薬草をかき集めてもらい凌いできました。これはまだいいのです。皆様の為ですから。ですが、教会のシスターは場所代と称して皆様からいただいた治療費用を一切私にはお渡しいただけませんでした。薬草も全て自腹なのです。』


民衆からは同情とシスターに対する批判という罵声が飛び交う。



『あまつさえ、私はシスターに奴隷として売り飛ばされました。ここにいるマサチカが私を買いとり、奴隷契約はすぐに切ってくれ、私のやりたい村への貢献を応援してくれました。皆様、教会とはなんなのでしょうか。皆様に安らぎを与えるのでなく、人を用いて錬金し、あまつさえ、私の好意をむしりとる邪のものなのでしょうか。』


いい感じだ。

民衆は怒りに打ち震えている。



『私は皆様を助けたい。それにはやはりかかるものもあるから、お金はいただきたい。それは変わらぬ思い。ですが、あのシスターの元ではこの胸は張り裂けてしまう。あの神聖なる場所を汚してはならない!』


『ナーニャ様こそが、真のシスター様だ!』

と声が発せられる。












それを皮切りに民衆は暴徒と化した。

♦︎

『ナーニャ様をお救いしろぉ!』

『シスターを殺せえ!』


暴徒は、一斉に教会になだれ込む。

シスターは茫然としたまま、捕らえられて

村の広場の簡易で作った絞首台まで連れてかれた。






『マサチカあああ!これはどういうことだ?』

シスターは怒り狂っている。


広場の木にひもがくくりつけられて、そのヒモはシスターの首に巻きついている。命を支えるは、足元のイスのみだ。


『皆のもの、このマサチカという男もこやつを奴隷として使役してるのだぞ!』


『いえシスター。治療は、ナーニャがやりたいからやっているのです。それに、奴隷契約は解消して単なる仲間に過ぎませんよ。』


『シスター、私はマサチカの仲間です。あなたと一緒にしないで欲しい。』


『おのれえ!貴様この女に何か薬でも飲ませて惑わしているのか!!』


シスターが叫ぶたびに、民衆から石が投げつけられて、罵声が浴びせられる。



『さて。皆様。まだこんな嘘をつき、我々を惑わすシスターは神に仕えるものでしょうか?私は悪魔の使いにしか見えませぬ。見たでしょう!地下の牢獄を!』


教会になだれ込み、そのまま地下の奴隷の収容所を村民に見せたあとだ。効果は抜群だろう。



『『『殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!』』』


民衆の怒りはおさまらない。


誰かがイスを蹴り飛ばした。



ギシッ!


『あがっ!』


頸椎を骨折したのだろう。シスターは即死だった。



♦︎


『マサチカは悪い男ね。こんなクソ女に催眠術かけさせて操れって言われた時はさすがにびっくりしたわよ。まあ、でもマサチカの言うことだから、やらない選択はなかったのよ。』


クレアは抱きついてくる。


催眠術を解かれたナーニャは相変わらずこちらをおどおどしている。


そう、全ては催眠魔法によりナーニャの証言をでっち上げた。


こんな恫喝すれば、言うこと聞く奴隷は使役してなんぼであるが、今回は素のナーニャでは演じきれないと思い、気高く、芯が強い女性を演じてもらった。


ナーニャが金をもらってなかったのは事実だ。

あの銭ゲバが全て懐に入れていた。


その後、神様扱いでナーニャが教会に常駐することになった。もちろんそうすると、俺とクレアの住処にもなる。


ナーニャの治療頻度は村人のはからいで月1回程度になった。しかし、薬草や食物の寄付や献金が殺到しており、かなり金を稼ぐことには成功した。

ギルド機能も教会が引き継ぐことになった。



クレアに頼み、ナーニャが本当のことを話すと心臓が破裂するよう、魔法をかけてもらったので、リスク回避も完璧だ。


『マサチカに、私頼られてるんだよね!頼られてるんだよね!だったら呪いでもなんでもこの奴隷女にかけてあげる!』

ちょっと怖いが、クレアは従順だ。


とはいえナーニャにも人らしい暮らしはさせる。




村の掌握は一歩進んだ。あとは、すこし腕の立つ武人が欲しいな。


ボディガードにもなるだろう。



マサチカは酒場でスカウト活動をすることにした。


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