企み。
『ふう・・・。』
死体処理もそこそこ。
この船の責任者というのはあらゆる責任を取らねばならない。死人が出たら船というのは如何様になるのか。
タバコの煙を燻らせる。
少し遠くを見ながら己の罪を悔いる。
あんな若い女に手を出したから。
あんな若い女だからといって邪険にしたから。
全ての出来事は己の責に帰すのだ。
客船でなく貨物船にしておけば、まだしも。
目撃者がいるのだ。
ここで客を殺したとしても、船を降りる時に発覚する。
かと言って乗組員が減っていても港に怪しまれる。
詰んだのだ。
詰んでしまったのだ。
あんなに苦労して得た今の地位を失う。
『どうしたものか。』
違法な海運業者になるしかない。
ここで全員を殺し、船は行方不明にするしかない。
一等航海士。
奴がついてくるのであれば、命は助けよう。
しかしながら、あの男と修道女は弱そうだからどうにかなりそうだが、女騎士の寝首を掻くのは
至難の業だ。
『やはりこれを使うしかあるまいな。』
小瓶を取り出す。
昔、買い付けた劇薬だ。
これを明朝の食事に混ぜる。
さて。一等航海士には計画を伝えねばならない。
椅子から立ち上がる。
タバコを消して、部屋の電気を消す。
ガタッ!
階段の方から物音がした。
緊張が走る。誰かが俺を、、、!!
小銃を取り出す。
構えながら少しずつ、少しずつ。
一気に身を乗り出した。
銃身をしっかり安定させる。
誰もいない。
『なんだ。気のせいか・・・。』
階段の下を覗き込むが誰もいない。
『助かっーー』
トン。
体が傾く。思い切り捻られて、銃を手放す。
首を階段の上の方に向ける。
『・・・・!!』
階段の上にいる人物を見た。
まさか・・・。なぜ??
そのまま俺は階段下の踊り場に後頭部を強く打ち付けた。




