詐欺師の身の振り方。
『いったい、、誰が!妻をっ!』
船長が咽び泣く。
振る舞いに下劣しか感じない船長だが、
人の心はあるということだろう。
『船長、船長。』
近づく女騎士。
探偵気取りのアホンダラ。
『遺言ってなんですかね?』
♦︎♦︎♦︎
『うう・・・。なんだって、わたしの妻が。うう。』
やけ酒をするしかなく、部屋で泣きながら飲む。
こんなに深酒は久々だ。
『う、う、ん。ああ、船長・・・。』
ふ。ふふふふ。
妻だけではないから、寂しくはない。
給仕の頭を撫でる。
『お前は本当にかわいいな。妻の次にかわいいぞ。まあ、妻より若いからもっと熟れていくのだろうが。』
『は、はい、、、。』
妻が雇った給仕。
はっきりいって思考力が低い。
こんなクズ男に凋落させられるとは、人間が浅い。
『しかし、ここまでは遺言通りだな。2が悶え死に、長の妻たるものは身投げす。ふむー。これだと次は・・・。』
給仕の頭を鷲掴みにする。
『次は・・・次は・・・私ではないかっ!!』
俺の手を苦しげに叩く給仕。
腕を放す。
『今日は帰りなさい。気分でないのだ。』
『は、はい・・・。』
♦︎♦︎♦︎
『つまり、夫人がいない時間に皆アリバイがあったと?』
『ええ。機関士さんも悲鳴とともに食堂にいらっしゃいました。皆様、お気づきにならなかったでしょうが・・・。奥様が亡くなったと聞き、血相を変えて走り去りましたが・・・』
給仕が証言する。
ソフィーの悲鳴を聞き、俺とルーン、一等航海士、船長、給仕が食堂に来た機関士を招き入れ、やってきたということか。
機関士は意外とチキンハートなんだろう。
すると、誰が夫人を・・・?
『遺言だ。さっき話しただろう。遺言に殺されてしまうのだっ!』
船長が震え上がっている。
遺言なんて。
全くバカバカしい。
それだけに、クローズドサークルは人を
狂わせるのだろう。
遺言ならば、確かに次は船長だが。
どうも、他殺にするには。
からくりを作らねばならないだろう。
いや、答えは案外簡単なのかもしれない。
『ソフィー、ルーン。2等航海士の部屋をもう一度調べよう。』
そう、この密室トリック。
スペアキーもないのだから、これをまず解明巣ねばならない。
遺言通りなら、俺らは死なない。
では、彼らはどうなのだろう。
話するまでもないが、遺言が人を殺すなど有り得ない。或いはーー
『魔法使いがいないのが悔やむポイントだ。』
魔法使いさえいれば、カラクリなんぞ、すぐだ。
しかしいるのは、魔法とは縁のない者たちの、はずだ。
だとすると人間の反抗だ。
それは確信した。
あとは、ルーンのバカ探偵を管理し、上手く使えるような形にせねばならない。
極力矢面に立たない。
それが、詐欺師の処世術なのだ。




