迷探偵ルーン
現代の科学捜査技術があれば、まだしも
異世界だ。そんな技術はない。
なので、とにかく現場を見るしかないのだ。
しかしながら。
『アホらしい。船員を狙った殺人ならば、
指を咥えて見届けることにしよう。』
『いいのですか、マサチカ。仮に航海士が全滅したら私たちは海の上で干上がるのを待つしかないんですよ。』
『マサチカー、私干し肉にはなりたくないよお。』
『ふむ。たしかにそうだなあ。しかしよ。探偵的な能力なんてないしな。』
『マサチカ。私に任せてください!』
女騎士が目を輝かせる。
『私はこういうの得意なんですよ。経験がありますから。』
『経験?まあよくわからないが、ルーンなら犯人に殺されることもないからうってつけじゃないかな。』
『ええ。1つわかっているのは、飲みかけのコーヒーのことですね。』
『それがなんだっていうの?』
『いいですか、給仕によると、二等航海士は寝る前にはコーヒーを飲み干すということです。彼が部屋に戻ったのが昨日の19時半頃。しかし、パーティは日付が変わるまで開催していた。つまりはですね。その間に犯行に及ぶならばアリバイは皆さんあるということなんですよ。』
『それは、そうだな。』
『つまり犯行は不可能。あのコーヒーは犯人によるカモフラージュです。甘すぎるカモフラージュですけどね。つまり犯行はパーティ終了後に行われた可能性が高い。』
『遅効性の毒ってことはないのかよ?』
『それも1つの可能性としては、ありますが・・・。』
ルーンがあたふたし始めた。
脳筋なんだから、こんなことしなくてもいいのに。
ルーンの推理は惜しいのだ。
犯行はパーティ終了後ではなく、おそらく早朝。死後そんなに立っていなかった。
体温が人並みにあったからな。
後、気になるのは、船長の言葉。
『遺言。』
これが何を示唆するかだ。
しかし聞くのも調べるのもかったるい。
金にならないのだ。
加えてこの世界の命の価値。
そう俺のいた世界に比べても、バタバタ人は死ぬ。
最初の村なんて、シスターを村人が処刑するくらいなのだ。
自分の命は自分で守って当然。
守れないなら死んで当然。
この世界はこのくらいしかない。
だとすると、この殺人において犯人が無差別殺人を狙ってるのだとしたら、真相を暴かなくてはならない。少なくとも、なぜ殺したか。
これを暴き我々に危害が及ぶか否か。
調べるのはここだけだろう。
『遺言』
これについて調べる必要がある。
航海士の奴らは感じが悪い。話をしてくれるかどうか。
機関士か、給仕。あとはまだ話をしてない夫人あたりに聞き込みをすることにしよう。




