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第一の殺人

『はあ、パーティーというかただの品のない宴会だな、これじゃあ。』


船は錨を下ろして海上に停泊しているので

全ての乗組員が会している。


『ガッはっはっは!給仕くんの飯は美味いなあ!なあ、妻よ!』

奥にいるのは感じの悪い髭の航海士。

『ええあなた。あらあら、お髭にパンくずが溢れていますよ。』


立髪ロール、金髪、安産型。

夫人という言葉がよく似合うゆったりとした華美なドレス。


髭の男と比べても一回り以上年下に見える。

真紅の口紅。黒のアイライン。やたらとケバい。

不自然なくらい派手な化粧で、若さを隠すかのような出立ちだ。


髭の口元を拭く、手は少し似つかわしくない手だ。なんというのだろうか。


『船長は、奥様とラブラブですなあ!』

先程、ソフィーをナンパしていた男だ。

あの髭、船長だったのか。


『マサチカ!食べようよぉ!お肉いっぱいだよぉ!』


ナンパされていたシスターは肉を首全体を使って食いちぎりながら骨付鳥を食べている。

下品だ。

『あちょ!あちょちょちょ!』


ルーンは剣で豚の丸焼きをざくざく刻みながら

食べる。


全体的に下品な宴会だ。

ソファにふんぞり返ってワインを飲み干す。

『食事も酒もこんなに品があって、美味いのにな。』


パンにアヒージョを浸して食す。

給仕は本当に料理が上手いのだな。ニンニクが効いていて、顔が思わず綻ぶ。


航海士たちはこちらに挨拶することもなく、

エールを飲み肉を食い、飛沫を飛ばしながらガハガハ笑う。




なんだか、かつて見た海賊映画の食事のシーンのようだ。





しばらく経った頃。

『おい、二等航海士なんだか顔色悪いな。』

機関士のおっさんが二等航海士を気遣う。


『す、すみません。なんだか、気分が悪くて・・・。』


『お部屋に戻られますか?』


『あ、ああ。』


給仕に抱えられながら、二等航海士は部屋に戻った。





♦︎♦︎♦︎

宴もたけなわ。給仕が片付けをしている。

『やあ、二等航海士くんは大丈夫だったのかな?』

『ええ、なんだか食あたりだったみたいで。』

『そうか。明日の航行に差し障りがなければ、いいが。』


給仕は忙しそうだ。あんだけ下品な宴会だ。

掃除が大変だろう。


しかし疲れたな。今日は寝ることにしよう。



♦︎♦︎♦︎

『ん・・・。あ、朝か。』

時間は9時。朝飯を食べに行かねばな。


なんだか船が妙に静かだ。すでに航行は始まっているはずだが、独特の船の揺れを感じない。


着替えて部屋を出ると、バタバタと走ってくる足音がする。


給仕だ。

焦燥感のある表情。

『どうしたんだ?』

『いや、実は、、航行担当の二等航海士さんが起きてこなくて。』

『そうなのか。俺も行こう。なんかあったら給仕さん1人じゃ大変だろう。』










扉を叩く。

ドアノブを回すも、鍵がかかっている。

『おぃ!二等航海士!二等航海士!くそ。なんだろう。給仕、昨夜部屋に行った時はどんな感じだった?』

『ベッドに寝られていました。少し良くなったくらいでコーヒーを淹れて・・・飲み干すのが就寝前のルーティンらしいんですが・・・。』


ふむ。

『扉をぶち破るか。』


ドン!ドン!

ガチャ!


扉が破られる。

テーブルには飲みかけのコーヒー。

椅子には、目を瞑っている二等航海士がかけている。

給仕が近づく。


『二等航海士様!航行の時間は過ぎております!起きてくださいまし!』


二等航海士の体が揺すられる。

しかし、目は開くことがなく、



二等航海士の体は床にずり落ちて、叩きつけられた。



『え?』


『き、きゃあああああああああああ!!!』


脈を測る。

動いていない。体温はまだ温い。


『死んでいる。』





給仕は腰を抜かしている。

『どうした!?』

機関士、船長、一等航海士が順にやってくる。



『二等航海士が亡くなった。』



飲みかけのコーヒー。

椅子に座ったまま。

温い体温。


何を示唆しているのかはわからない。

彼はなぜ死んだのか。




『あなた、どうしたの?』

『お前は来るな!くそっ!くそっ!遺言通り始まったのか?くそっ!くそっ!』


異世界の海上で起きた怪死事件。

これは、序章に過ぎなかったのだ。


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