商売感覚のない客船。
夕陽が美しい。
船旅に出て4時間ちょっとだろうか。
転々と変わる海と空の風景。
タバコに火をつける。
男が近づいてくる。
『兄ちゃん、なんだか佇まいが他のやつらと違うな。この国のもんか?』
白髪のガタイのいい男。
タンクトップがよく似合う。
『あ、すまねえ。俺はこの船の機関士だよ。あまり見かけない人種だと思ってね。』
機関士もタバコに火をつける。
『機関士というのガタイがいいのだな。』
『いや、俺は体鍛えるのが好きでね。海の男って感じだろ?』
カッカッカッとヤニまみれの歯を見せて笑う。
『ヤマダマサチカだ。』
『ヤマダ?このあたりでは聞かない名前だな。』
『まあ異国の人間だ。』
『しかし、アンタもよくこんなしけた客船に乗るねえ。』
『確かにしけてるな。接客がなっていない。』
『俺は機関士だから、よくわからんが。接客だけじゃねえよ、この客船に人が寄り付かないのは。』
タバコの煙をくゆらせながら、何か遠くを
見つめる機関士。
『名乗らないってのもな。』
苦笑しながら話す。
『船長の意向でさ。まあ、たまにいるんだよ。船乗りをつけ回すバカが。』
こっちでいうストーカーの部類だろうか。
『まあ、料理と酒は美味いからさ。いい給仕が入ったよ。ご夫人のツテで採用されたんだけどよ。気立てがいい子だよ。』
そうだ。給仕と対比すると、さっきの髭もこっちの機関士も雲泥の差だ。
『ご夫人はキレモノさ。なんだか、年離れた船長を尻にしいて経営改革でもしてくれるんでないかな。それであれば、シノギになるさ。』
シノギ。
なんか品がないというか、、
黒い。
♦︎♦︎♦︎♦︎
『お姉さん、きれいだね。どう?パーティーのあと、僕の部屋で・・・。』
『えー、どうしようかなあ。私、はじめてだしぃ。』
下劣な会話が廊下に響き渡る。
見慣れた修道女とロン毛の男。
『まあ、本人の自由だからな。』
『あ、マサチカー!おーい!!』
なんでこっちに声をかけてくるのか。
『チッ・・・。』
ロン毛の舌打ち。
こいつら客商売なめてるな。
ロン毛は去っていく。
『マサチカ!ナンパ!ナンパされちゃった!』
『・・・。』
ゴミを見るような目で見てやろう。
『なあに?嫉妬しちゃった感じー??』
ニヤついているソフィー。
小突いてやる。
『あ、痛っ!』
『たく、避妊具もないのに。』
『ひにんぐ?』
『ああ子どもが出来ないようにするための道具だよ。』
『子ども?コウノトリさんが運んでくるんでしょ?』
顔に手を当て、ため息をつく。
こいつは、フィアのやつ、本当に箱入りで
育ててきたんだな。
まあ、修道女は必要のない知識なのかもわからないが。
『お前はルーンに子どもの作り方を教えてもらえ。』
『ええ!なんでぇ?』
全く。なんてやつなんだ。
そろそろパーティーが始まる。
楽しいパーティーになるかは、なんとも言えないが。給仕の飯は楽しみだ。




