宗教都市の陥落
『よ、傭兵団に伝えよっ!至急出撃だ!』
教祖は声を震わせながら周りのシスターに指示する。慌てて、飛び出したシスターの1人が傭兵の宿舎に駆け込む。
『敵襲!敵襲っ!!』
そう叫ぶシスターは宿舎の光景を見て絶望したような表情だった。
大規模な宴会が催行されているのか、酒でつぶれた傭兵、酒の勢いで使用人を組み伏せている傭兵、喧嘩をしている傭兵。とてもあの士気が高い、民兵と戦える状態ではないと、素人目でも理解できたからだ。
『おー。シスターちゃん。俺らの相手をしてくれよう。』
挙げ句の果てに、金をチラつかせながら春を買おうとしてくる。未来の見えない宗教都市、崩れかけの宗教都市。シスターは直感的に理解した。
『もう助からない。』
そのシスターはそのまま手持ちの短刀で果てた。
『うおおおおっ!』
大聖堂の門はそれなりに頑丈だが、、、
『破城槌を持て!』
ソフィーがそう叫ぶと、民兵隊は押しぐるまに乗せられた丸太を持ってきた。
それをそのまま5人かがりで門に打ちつける。
ガンっ!ガンっ!ガンっ!ガンっ!
ガコンっ!
『開門したぞー!!!A班は、傭兵の宿舎に火を放ち、あぶり出したのち、3人1組で各個撃破!残りは大聖堂へ!!』
ソフィーは的確な指示を出す。
俺はソフィーの戦いを望遠鏡で確認している。
『さながら、オルレアンの乙女のようだ。騙されて思い込んだ人間は恐ろしい。』
もちろん、ソフィーのやりきろうとする力はでかいのだが、騙すのが大変な女だ。
『なあ、ルーン。この都市は俺らのものになるかな?』
『ええ、大丈夫ですよ。マサチカ様の智略を以ってすれば。』
ソフィーは指導者に担ぎ上げられるだろう。しかし指示は俺が出す。傀儡政権の出来上がりなのだ。
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『ああああああああああああ!』
『嫌だあああああああああああああ!』
傭兵らは炙り出され、民兵に囲まれて槍で刺し殺される。実にいいチームワークだ。冒険者を傭兵にしてはダメだな。彼らは金と酒そして色恋にしか興味がない。
敢えなく制圧された。
そして、大聖堂も同様で、呆気なく教祖は殺されたと後から聞いた。
と、ここまではよかった。
ソフィーは指示に忠実すぎた。というか指示以外には気が回らなかった。
『宿舎と大聖堂は焼き払え。』
この指示に忠実だったからだ。
民兵らも慌てふためく。
『お、おい!ソフィー火の手が早すぎる!どうするんだ!?もう鎮火した方が。』
『鎮火はシナリオにないわ。燃やし尽くす。』
『そ、そうかい。リーダーがそう言うなら・・・。』
ソフィーは崇められすぎた。
『虐げられたシスター!そして、不当な扱いを受けた貧民街の住人達よ!今こそ蜂起の時だっ!!!』
ソフィーには連判状と伝令を作らせて、武力蜂起を促した。シスターの立場も、貧民街の住人としての立場も両方当事者だったからこそ、リーダーになり得た。しかもシスターは全て自警団として一定の力があるのと、実は貧民街の住人にはルーンが訓練を施していた。それもソフィーの名前で。
そんなわけでソフィーの言うことに民兵達も盲信的に従ったわけだが、事は重大だった。
炎は宗教都市全体に及ぶことになったからだ。




