革命の日
大聖堂の大広間で教祖は食事を摂っていた。
かちゃかちゃ。肉を切り、
赤ワインで流し込む。
『ふう。このワインは格別だねえ。ほら、キミも飲んでみるかい?』
近くには、一糸纏わぬ姿のシスターを侍らせている。お気に入りのシスターなのか、教祖は赤ワインを口に含み、口移しで飲ませた。
『お、美味しゅうございます、教祖様。』
紅潮しながら、上目遣いで教祖を見るシスター。
教祖の目が見開き、よだれを垂らす。
『キミ、あとで私の部屋に来なさい。』
教祖は食欲を優先したのか、再び肉とワインを嗜む。
『にしても、食客さんの進言は素晴らしいですなあ。金も稼げて欲も満たせる。先代はなぜこのようになさらなかったのかなあ。』
教祖は悦に浸っている。
典型的な暗愚な2代目。亡国の君主。
王宮に引きこもって、酒池肉林の生活。
国は荒廃している。
売春の合法化。
定期的な売春組織の締め付けの為の無罪のシスターの処刑ショーと、投票券の販売。
反乱を抑える為の法外な報酬による傭兵の使役とその為の財政悪化。
売春の利鞘はほとんど教祖の贅沢品と傭兵に使われる。
いつか何かで読んだ歴史小説にあった滅んだ国を思い出した。
傭兵団をどうするかだ。
彼らは忠誠心がない。だから金が出る範囲で命懸けにならない範囲でしか仕事をしない。
1人1人は強いが、統率は取れていない。
一方、明確な復讐心、恨み、怒りに支えられた組織は民兵とはいえ強い。この国を変える。良くする。そのミッションに支えられているからだ。
傭兵団の宿舎は大聖堂の隣にある。
豪華絢爛という言葉が相応しい作りで、個室が用意され、使用人がついている。この使用人ももちろん、売春婦だ。
食事は常に、バイキング形式で食べられるようになっており、酒も飲み放題。
使用人を抱くにもしっかり金を払う必要があるので、なんとかその収入もあり、こんな福利厚生施設を維持できている。
さて、こんな放蕩な組織だ。人間は楽な楽な方へしか流れない。機能不全な傭兵団なら民兵で勝てる。
ブォー!
何か楽器のようなものか、音が聞こえる。
『ん?なんだ?』
教祖は窓に近づき目を凝らす。
『そ、そんな!』
大地が揺れて、音が鳴る。
鳴るというレベルではない。騒音。
砂埃が舞う。怒号が聞こえる。
『教祖を!教祖を倒せえええっ!!』
先頭には、かつて手籠にしかけた、修道女が旗を振り回し、軍団を率いている。
『な、なんだ、あれはああああ!!?』
修道女が、宗教都市の反体制派、そして貧民街の民衆を率いて大聖堂に攻め込もうとしている姿だった。




