ソフィーは意思のない機械人形(オートマタ)。
反逆者であるフィアの葬儀は、宗教都市でなく
貧民街で密かに執り行われる運びとなった。
葬儀といっても、俺とルーンとソフィーの3人での貧相な葬儀。ソフィーは姉とよく食べた果物を遺体の側に置く。せめてもと思い、ルーンと俺で棺だけは作った。貧民街から少し離れた山間の静か場所。貧民街と宗教都市を見渡す場所に埋められることになった。
ソフィーは泣きすぎて目が腫れていた。
唯一の肉親を無くしたのだ。その悲しみは計り知れない。
俺は超えてはいけない一線を超えた詐欺を働いたようで、罪悪感を感じる。
ルーンは思いの外、悲しんでいなかった。ルーンにとってフィアはただの遊び相手に過ぎなかったのだろう。
フィアの棺に土をかけていく。
少しずつ、苦しまないように。
『お姉ちゃん!お姉ちゃんっ!うわあああ!』
泣き叫ぶソフィー。いたたまれない表情で土をかけていくルーン。俺は無表情を装う。
この悲しみ、喪失感に包まれたソフィーをどう復讐の炎を激らせる革命戦士へと変貌させるか。
葬儀が終わった。
ソフィーは立ち尽くす。
『ソフィー、これからどうするんだ?』
『お姉ちゃんがいない世界で、どう生きていけばいいかわからないの・・・。』
うなだれるソフィー。
『お前はどうしたいんだ?』という問いかけは愚問であろう。意味のないことだ。意思のない作業ロボットに同じ質問をするくらい、くだらないことだ。どんな時にどこで何をするか、そういうプログラミングをしてあげないと動けない人間だ。
しかしながら、その頭脳はもういないのだ。
使用者のいないパソコンだ。
ソフィーが己の感情で動いたことは、、、
ソフィーは1度椅子をぶん投げたことがあったな。
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『なるほどね、そのありがたい教えを広める為にストレスで酒を飲んで、ぶっ潰れて、全裸で寝てたということか。』
『なっ・・・・。』
ソフィーの目つきが変わる。痛いところをつかれると人間はこうもムキになる。
普通こんな地雷踏もうものなら、人間関係は壊れるが今のソフィーにとって俺らはソフィーの名誉を積み上げるための、大切な客人だから大丈夫。加えて怒りは本音を引き出しやすい。だから敢えてだ。ソフィーは感情をよく出すタイプだからきこれが正解。
『あんたに、あんたに、あんたに何がわかるのよおおおおお!』
ソフィーは椅子を宙に振り上げ、床に叩きつける。
♦︎
今振り返ると、フィアの指示を真っ向否定されたことに対しての怒りだったな。
フィアを否定することが、彼女の行動動機なら・・・やることはそれだ。
『ソフィー、お姉ちゃんは成し遂げられなかったな。宗教都市の革命を。』
『だ、だから何よ・・そんなのお姉ちゃんがいない今、意味のないことよ。』
『では、お前は姉の死を無駄だというのだな。』
『・・・違う。』
『姉が望んだ世界は、絵空事だった。だから意味のないこと。無駄死にか。』
ソフィーが、俺の襟元を掴む。
目は見開き、血ばしっている。襟元を掴む手は震えている。
『・・・もう一度いってみろ・・・。お姉ちゃんを!お姉ちゃんを!お姉ちゃんを愚弄するなあああああああ!』
ソフィーは拳を振り上げた。
『無駄でないのならっ!なぜ、お前は姉の意思を引き継ごうとしないっ!姉の目指した世界が理想ならお前はなぜ、姉の理想を叶えてやらないっ!』
声を張りあげる。
ソフィーは拳を止める。
『・・・っ!そんなのっ!そんなのっ!私だって!私だってお姉ちゃんの目指した世界を叶えてあげたいっ!お姉ちゃんを殺されて悔しいわよっ!!!でもね、どうしたらいいかわからないのっ!何をすればいいかわからないのっ!!!ねぇ!私は!私は!私はどうしたらいいのよぉぉ!』
ソフィーはその場に崩れ落ちる。声をあげて泣く。感情が溢れ出る。あとは、感情をブースターとして行動に促せばいいだけだ。
崩れ落ちたソフィーに手を差し出す。
『俺に策がある。お前がやるべきことは全てそこに書いてある。その役をただ、言われた通りに演じろ。さすれば、お前の理想は叶う。』
後光が俺の後ろにさす。光に包まれ、神々しく見えただろう。それすらも計算だ。
ソフィーはすでに俺の手を取って立ち上がっていた。




