散りし迷い花
私が魔法使いになったのは、
おじさんとの2回目の営みの時だった。
バキッ!ドスッ!ドスッ!
腹を殴られる。
『・・・・かっ!』
『おい、果物やったんだからまだ気絶されても困るぜっ!』
おじさんの鼻息は荒い。営みではない。リンチだ。
バケツいっぱいの水をかけられる。
『ああああああっ!』
『なあ、フィア。だるまさんにならないかあー?』
一瞬意味がわからなかった。
しかし次の瞬間、おじさんがノコギリを持ってきてその意味を理解した。
殺される。
直感が告げる。
果物くらいでここまでされるには、お釣りがいくら来ても足りない。
しかしながら、殺人を犯すことはこの世界では
即処刑に繋がる。
ソフィーのことを考えると、だめだ。
だるまにされるのもダメだ。
ならば、、、
私の目が赤く光る。
その目をおじさんに向けると・・・。
『が、が、かっ・・・?』
おじさんは何やら赤い光に包まれて動けなくなっている。
この後どうするか?
おじさんは声が出せない。
この力を解けば私は殺されるだろう。
私が彼に手をかけても、死体の処理が面倒、というかそれこそが、1番大変だ。
だとしたら。
おじさんを食べてしまおう。
おじさんは悲鳴をあげていた。
痛いとか、
食べないでとか
うるさかった。
だから、喋らせないためにも、
声帯を先にいただいた。
それからは、食事に集中できた。
髪は川に流して、骨は粉々にして
水と一緒に飲んだ。
私は魔法使いになった。
とても邪悪な魔法使い。
バリバリ。
ボリボリ。
『はあ・・・お腹いっぱい。』
私ににじり寄った冒険者達は、
おじさんたちと同じようになった。
数が多かったから、ちょっと余らせてしまった。
『栄養は取った・・・。私、1人でも教祖を倒す。』
正常な判断ができない。
大聖堂の門をよじ登る。
教祖が塔の上から見下ろしている。
何か口元を動かしている。
なんだっていい。もはや、大聖堂を燃やし尽くす。ソフィーのために。全部燃やしてソフィーと一からやり直そう。
『うわああああああああああ!』
自警団が弓矢を打ってくる。
『ファイヤーボール!』
弓矢ごと自警団を焼き払う。
大聖堂に入る。
弓矢が雨のように降り注いでくる。
全て火炎魔法で燃やす。
『はは!所詮烏合の衆に過ぎないわっ!!!』
しかしながら。
弓矢は降り注いでくる。
ひっきりなしに。
防御魔法を・・・・。
ザクっ!!
『あああああああっ!!』
矢が太ももに刺さる。
血が流れる。
『うおおおお!』
魔力を全開に放出した。
あたりは光に包まれていった・・・。
『お姉ちゃんっ!お姉ちゃんっ!』
ソフィーは全力疾走だ。しかし、そんなに体力が続かないのか、時折止まって肩で息をしながらまた走り出す。
石畳の道は走りにくい。
俺も体力はそんなにないのだ。休み休み行くしかない。ルーンは楽そうだ。
大聖堂に向かう途中。
売春ギルドがある。いつもとは違う光景で。
燃え盛る建物。断末魔の叫びがそこかしこで聞こえる。衣服を剥がされたシスターの絶望の声、それを見て猛り狂う傭兵達(冒険者)。
宗教都市の一角は内戦状態だった。
地獄であった。
俺が作り上げた地獄。
売春ギルドを横目に、大聖堂にいそぐ。
大聖堂の方でも煙があがっていたからだ。
たぶんそこに、あいつがいる。
『お姉ちゃんっ!!』
大聖堂の門をくぐり、建物に入る。
『・・・・・・!!』
瓦礫、椅子や備品がめちゃくちゃで破壊し尽くされている。
俺らは歩みを進めた。
大聖堂の中央だった。
立ち尽くしているフィア。
しかしながら、身体中に無数の矢が突き刺さっている。瞳は既に見開かれていて、人間というよりかは標本に近いような空気を漂わせる。
しかしながら、流れ出ている血が先程まで、生けるものであったことを示唆していた。




