決戦前夜
平民は改革や変化を嫌う。
それは世の理だ。
特に改悪になる変化なら尚更だ。
貧民街からの流入、冒険者の流入、売春の推進。
宗教都市は、ほとんどがシスターで構成されている都市だ。
シスターは、
年齢関係なく客が取れそうな見た目と体であればどんどん商人と冒険者との同衾を強要された。
貧民街からの流入は、
仕入れ目的だ。売れそうな見た目、体をしている男女はどんどんウリをやらされる人員に回される。
金額の40%が本人、残りが教祖の懐に入る。
しかしこれが、良くなかった。
シスターが富を持つということが。
一部のシスターは、売春ギルドなるものを作り、組織化していく。当然、都市内での発言力も強くなるのだ。
するとどうなるか。
絶対的な教祖に全て従うといった、雰囲気が薄まるのだ。
そういった富を握るシスターは、傭兵を雇い出すようになる。富だけでなく、武力をつけて一層、発言力は増していく。
そんな事を吹きこんだのは、フィアだった。
もともと教祖寄りの人間とシスター達に思われていたが、先日の弓矢隊を炎で蹂躙したのは、フィアじゃないかという噂が流れていた。
そんな噂が流れ始めてすぐ、フィアは教祖に会いにいき、手土産に攫って洗脳を施した女冒険者を献上した。
『冒険者崩れの売春婦か。そういうのを好むのもいそうだな。』
教祖の機嫌取りをし、恭順の姿勢を見せながら、
反教祖派を焚き付ける。
それも。
『私は教祖に純潔を捧げた、犠牲者だ。許すまじ。』
というストーリーでシスターに取り入る。
同じ境遇のシスター達は、同情と共感によりフィアを信じる。
貧民街の隠れ家で、本を読んでいた。
そこに、フィアがやってくる。
『あらまあ、どうしましょ。マサチカさんの言う通りになっちゃったわあ。』
いつもの甘ったるい声を出すフィアだ。
胸元を寄せて腰をくねらせる。
『ああ、ルーンなら、隣の部屋にいるよ。』
『ふふ。高ぶってしまってね。ふふ。』
部屋に入ると、あられもない声が聞こえ始めた。
さて、あとはだ。
売春ギルドのシスターが傭兵を雇うのは、
ボディーガードが欲しいからではない。
理由があれば、
教祖に攻め入るためだ。
そういうコミュニケーションをフィアには取らせた。
フィアの弱みは、ソフィーだ。
1日でも早くソフィーに楽をさせたい。
これを盾にフィアを動かす。
1人1人の行動欲求を知ることができれば早いものだ。
『ソフィーは脱走犯扱いをされている。だから、早く旗揚げし、兵力をぶつけよう。』
こんな口車にもフィアは、あっさり乗ってしまった。フィアは頭は悪くない。しかし、よくいえば妹思いだ。シスコンともいえるかもしれない。
旗揚げは明日だ。
結果は分かりきっている。
そこからが、この詐欺の本番なのだから。




