魔法使いのビジネス
ソフィーの手引きで教祖に会うことになった。
この格好の俺を知らない教祖に流浪の商人として取引を持ちかけることにしたのだ。
『商人様とな。久々だよ、新しい商いの話は。』
パンパンと手を叩く。
酒と魚、肉料理が運ばれてくる。
『して、どんな商いですかな?』
『人を使ったビジネスですね。』
『奴隷労働ですかな?』
『いや、見たところ娯楽が少ないように見えるこの都市に娯楽を提供したいと思いまして。』
『娯楽か。聖人に娯楽を提供するのは、ちょっと教団のまとまりが悪くなるんですよねえ。』
ワインを瓶から飲む。飲みこぼしが、口元から滴る。脂まみれのステーキを手で掴み、噛み付いて頭全体をぐいっとひいて引きちぎる。
くちゃくちゃと言わせながら、口内の食べ物を撒き散らしながら話す。
『いいえ。お客様はこの街の商人です。』
『ほう、して何を提供するのですか?』
『それは、修道女の純潔でございます。』
『商人様は私どもの教義を勉強されてないのですかな?シスターは処女でないといけない。』
『ストーリーがあれば、その教義は変えられると、私は思っています。』
『ストーリーか。ならば、そのストーリーもあなたがご提案くださると?』
『ええ、そのあたりは抜かりなく。』
信者が増えているのはいいが、シスターの収入の底上げしないと信者もお布施を増やせない。
シスターは現状、収入がほとんどなく
クズ野菜の仕入れと仕入れさきでの物乞い、
教団の物販でなんとか成り立っているようだ。
しかし財源不足は深刻だ。
『まあ、あなたの提案にのってみましょう。幸い女は多いですから。修道女を汚したいというニーズは高そうですし。手始めに誰かでテストしたい。』
そうあいつしかいない。
教団で発言力や影響力がなく、トカゲの尻尾になりそうな。
『テストは1番、汚れてもきりやすいシスターがいいですね。』
『なるほど。おい、誰か!!』
教祖の家来が近づいてくる。
『そうだな、あいつがいいな。ふふ、そろそろ邪魔だったしな。』
そう・・・。
『汚れ役はソフィーちゃんが、いいと思うわあ。あの子ねえ、私のいうことならね、聞くから。』
フィアは恐ろしい魔法使いだった。




