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嘲笑、侮辱、辱め

堅牢な建物が並ぶ。白塗りで、統一されており

全ての建物には窓が一つしかない。


光を反射する白塗りの作りと比較すると、

建物に差し込まれる太陽光は限りなく少なさそうだ。


人通りもなく、俺たちが歩く靴の音が石畳の街にカツカツと響く。


太陽に映える街の色に相応しくない不気味さがある。



街の奥に聳える大聖堂のような建物。


『ここに教祖様がいるわ。』


ソフィーはそれだけ告げ、門を叩く。

門も白塗りで中は見えない。


太陽光を弾く白塗り。

陽たるものを寄せ付けない。我々は我々だけの世界で生きるという排他的なような意思の表れなのでないか。


街の印象は当初から比べてだいぶ変わった。

大聖堂に入り、奥に進むと壇上にすらりとした

薄い衣を見に纏った男がいる。


その周りには、無表情のシスターが辺りを囲んでいる。



『教祖様の前よ!頭を下げてっ!』


ソフィーは慌てて、

俺とルーンの頭を腕で下げようとする。


『ソフィー、大丈夫ですよ。神の前では人は皆、平等ですから。』



教祖はにこやかな感じな人だ。シュッとした男性で、髪は教祖っぽさを出す為か腰のあたりまで伸ばしている。切れ目で迷いがないくらいの眼光が奥底に潜んでいる。


温厚そうな印象は演出なのかもしれない。



『そこのお二方が新たな入信者ですか。この度は我が教えに興味を持っていただき恐悦至極の思いですな。』


壇上からその言葉は、少し嫌味に聞こえる。


『いえ、教祖様にお目通り願いまして大変光栄でございます。』



もう少し謙るべきだったかな。



教祖は俺とルーンをじっと見る。

ならば、こちらもじっと見る。



『はっはっは!恐れを知らぬ良き眼ですね。どうですか?入信の儀を行う前にこの街のことをよく知ってからでいいのでないでしょうか。ねえ、ソフィー。』


その笑いには、何か嘲笑じみたものを感じる。

周りのシスターもクスクス笑う。



『あ、いや、この者らの信仰心は確かかと。ぜひただちに・・・。』


『まあ、焦らずとも。』


にこやかに答える教祖。しかし、端的に。もう口答えを許さないように。


『は、はあ・・・。』


『不服ですか?』


眼つきが鋭くなったように感じた。

蛇に睨まれたように、ソフィーは縮こまる。



『い、いえ。仰せのままに・・・。』


ソフィーは食い下がった。


『さあ、ソフィーよ。あなたの住処でしっかりこの宗教都市のことをお伝えするのですよ。』


感情の揺らぎは全くなく、

ソフィーに指示だけし教祖は奥へ消えていった。





大聖堂を出る。

こころなしか、ソフィーの背中が小さく見える。

とぼとぼと歩く、という表現がわかりやすい。




ソフィーには今日のやりとりについての意味、暗示するものは聞かないことにしよう。






その日からソフィーの住処にお世話になることになった。



家は客人を迎え入れるには少し手狭だ。



部屋は2つあるが、ルーンとは相部屋だ。

俺らに男女の間違いは起きないが、

2人の関係性を知らないとしたら悪意がある。


こんな生活環境であることは

教祖は知っていたのか?


知っていたとしたら・・・。



『ごめんね。もしあれだったらルーンは私の部屋を使ってもらっていいから。』


『いやいや、そんな・・・。』

と言いかけるルーンを俺は遮った。


『いや、ソフィーありがとう。客人としてもてなしてくれて。お言葉に甘えさせていただくよ。』


なんとなく、察しはついた。

ここはこうするのがソフィーの為なのだ。


『うん、こちらこそ。』


苦笑いで答えるソフィーがそこにはいた。




大筋は掴めた。念のため明日、酒場でフィアに聞いてみるか。金さえ積めば教えてくれるだろう。






そのあとソフィーは笑い、明るくつとめていた。食事も振る舞ってくれた。






しかしその夜遅く、リビングから聞こえてきたのはすすり泣く声と飲み干したウィスキーが入っていたグラスの氷がカランとなる音だった。

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