魔法使いのお姉様
宗教都市に入るには、
検問所のようなところを通過する必要がある。
『ここの検問所に屯している魔法使いが厄介でね。』
ソフィーは大事そうに金の入った袋を持つ。
口ぶりから察するに、この魔法使いへの献金のようだ。
『魔法使いはシスターなのか?』
『ただの雇われよ。』
お布施、というのもソフィーの強がりだったか。
プライドの高い奴は素直さがどうも足りない。
こんなシスターが人を導くことができるのか。
検問所を通過しようとしたときに、件の魔法使いは現れた。
『あらまあ、どうしましょ。あのソフィーが入信希望者を連れてくる日が来るとねぇ、、びっくりだわあ〜。』
紫色のショートヘアにウェーブがかかったヘアスタイル。スラッとしながらも、ふくよかな胸元。
黒のマントに、黒いブラウス。ショートパンツに程よい肉付きの御御足。
少しそそる姿におっとりした口調。
目はぱっちりしており、少しパンダ目。口角を常にあげていて、にこやかな雰囲気を醸し出す。
『あらまあ、どうしましょ。なんだが、ダンディな殿方も連れておいでで。ソフィーも体は女の子だものね。枕営業でもしたのかしら?』
あながち間違いはない。
ソフィーの頭から、焦ってますよーと言わんばかりの汗が噴き出る。
『わ、私の布教活動が実っただけよっ!ほら、あんたが欲しいのは、これでしょっ!』
『あらまあ、どうしましょ。こんなにお布施がたくさん。殿方からかしら?やっぱり、ソフィーあなた、女の武器を・・・。』
『あと、これはフィアの検問料よ!いつもご苦労様!』
ソフィーは律儀にも、しっかりこの魔法使いの取り分を分けていた。
『あらまあ、どうしましょ。検問料なんて、いただけないわあ〜。』
『じゃあ、シスターからの施しよっ!神の御加護がありますようにっ!』
ソフィーは押し付けて、スタスタと検問所を抜けていく。
『施しなら仕方ないわよねえ〜、ね、ダンディーな方。』
こちらにウィンクしてくる。
『シスターへの寄付がしっかり、信徒に還元されて嬉しいよ。』
白々しく、それだけ答えた。
『あらまあ、どうしましょ。私が信徒という誤解は解いておかないと。私は、フィア。検問所でご奉仕させていただいている一介の魔法使いにすぎないわああ。ダンディーな方、酒場でもご奉仕させていただいているから、何かご奉仕できそうなことがあれば、声かけてねえ。』
『ああそうかい。』
宗教都市なのに、酒場があるということは酒は容認しているということか。
『ああ、あと。私にはナンパはしないようにね。そっちの女騎士さんはねえ、歓迎よお。』
ルーンにウィンクを送る。
ルーンはビクッと体を震わせる。
顔が赤い。
恋する少女といったような潤んだ、しかし恥じらう表情をしている。
ルーンは、アーニャみたいなタイプじゃなくても
落ちやすいんだな。
これは使えるかもしれない。
しかし、なぜナンパするなとわざわざ初見の人間に忠告するんだ?
まあ、少し手駒にできそうな人間とも会えた。
さてさて、とりあえず教祖様にご挨拶に行かねばと歩みを進めた。




