愚かな修道女は、彼女なりに頑張る。
ソフィーの目的。
なぜそれを俺が知ってるかは、前述した通り。
しかし、貧民街に繰り出しては酒を飲み、自分の野望を語るとは。
宗教都市のスパイがいたら
破門どころでなく、粛清だというのに。
『あー!貧民街の人に聞いた感じ??』
『まあ、そんなところだ。』
『そっかあ、まあいいか。うん。宗教都市から独立したいんだよね。』
特に躊躇うことなくあっさり答えた。
『ずいぶんあっさりだな。』
『まあ、別に本部としても預かり知るところだからね。宗教都市の教えが広まるのはいいことだからね。』
なるほど。支部を作るくらいのフラットな感じなのか。
『でも、お前はそれを許されていない。悶々とした日々を過ごしている、と言ったあたりかな?』
ソフィーの顔が強張る。
しかし、すぐににこやかな表情を作る。
『いやいや、時期の問題よ、そう時期の問題。』
笑みがこれでもかというくらい引きつっている。
何か後ろめたい事実がありそうだ。
この気まずさを脱したいのか、ソフィーが
質問する。
『なんで、あなたは支部を作りたいの?信徒でもないのに。』
『まあ、信仰は偉大だからな。』
解釈がどうとでもなりそうな答え。
はて、ソフィーはどう解釈する?
『そ、そうよね。いい教えは広めるべきよっ!』
予想通りの回答。えらい、えらい。
『そういうことで、自らの純潔を賭けてギャンブルに興じたソフィーさん。宗教都市に入りたいのだが、如何かな?』
そう、そもそも純潔をかけた試合をするシスターはすでに邪道なのだ。
『・・・・わかったわよ。じゃあ取り次いであげる。2,3日待ってもらえるかしら?』
バツが悪そうに宿を去る。
このくらいのギブアンドテイクはありだ。
しかし2,3日か。意外とかかるな。
言われた通り2,3日待つことにした。
『ソフィー遅いですね。』
『ルーン、部屋で剣の素振りはやめてくれ。』
こうも暇だと体が鈍るのか、ルーンは素振り、剣舞など、ちょっとこっちの命が危うくなるようなことをこの、狭小な部屋でやり始めた。
『す、すみません。』
ルーンのあの暴走っぷりは最近なりを潜めている。まあ、きっかけがないだけだが。
ドタドタドタドタ。。
『ま、待ったせたな!我が同胞よっ!』
ソフィーが階段を上がってきた。
『遅かったな。』
『うるさい、私が取りなしてやるというのに横柄だぞっ!』
ソフィーはプンスカプンスカと怒っている。
『まあまあ、俺らが入るのも、ソフィーがやったようなギャンブルに近いようなもんなんだろ?宗教都市にとっては。』
『う、、うるさいっ!』
焦っておりますな。
愛いやつじゃ。ほっほっほ。
『入れそうなのか?』
ルーンは素振りをやめて尋ねる。
『ああ、入れるには入れるが。お布施が欲しいそうだ・・・。』
欲しいそうだ。
言い方が引っかかる。このバカシスターは既知のことであれは、すでに宗教都市に伝える前に、
お布施のことを俺らに伝えるはずだ。
駆け引きでお布施のことをこのタイミングで話をしてるわけではなさそうだ。
すなわち。ははーん、なるほど。
『まあそのくらいいいだろう。そっちの言い値で構わん。』
『い、いいのかっ!?』
『ああ、いろいろあって金はあるからな。』
金の入った袋を出す。
『そ、そうかっ!それは良かった!では参ろうかっ!』
ソフィーは上機嫌だ。
まあ、これでソフィーの状況は察した。
あとは答え合わせをして、プランニングするだけだ。
かくしてやっと宗教都市に入ることができたのだ。
まあ、それでもやることは山積みなのだ。
既に信仰が浸透している組織の牙城をいかに崩すか。
『ゴールは遠いな。』
そう呟き、宗教都市に向かうことにした。




