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貧民街の修道女

堅牢な門がそびえたつ。


真っ白な大理石の門で中は窺い知ることはできない。

同様に真っ白な城壁に囲まれたその都市に抜け道はなさそうである。


門番もおらず、どうしたらいいかわからない。


ルーンの話だと、ここから徒歩30分ほどの場所に

貧民街がある。


『貧民街で話を聞くしかないかなあ。』



宗教都市を後にした。











粗末な荒屋が並ぶ。

道路は整備されておらず、泥とゴミが踏み固められたような道。匂いもひどい。



路上ではぼろぼろの服を着たこの街の民が座り込んでいたり、寝そべっていたりする。

一方、簡易的な屋台もあり商いが成立しているようだ。


しかしどの屋台の店主も顔に傷があったり、指が1本無いなど、治安の悪さを感じる。


そんな中一際騒がしい屋台があった。

少し街の開けた場所で屋台と、樽などで作った

野外の客席が何席かある。



その中で一際目立つ人間がいた。

修道服だが、腕をまくりテーブルに片足を乗っけて周りの客から煽られているからか、エールを一気飲みしている赤い髪のシスター。


『ぷはははあああ!オラオラ!おまいら、飲み干したぞおおお!!』


『いいぞ!ソフィー!』


『いったれ、いったれ!』


『今日は私の奢りだああ!』



シスターということは、、


『たぶん、宗教都市のシスターでしょう。なんでこんな貧民街にいるのでしょうか。』


ルーンはアゴに手を当て、うーんと唸る。

ルーンよ、お前はサバイバル能力と武力以外はからっきしなのだから無い脳みそで考えるのはやめなさい。


とは言っても俺もわからない。どうにかお近づきになれないものか。



屋台に行く。

メニューのエールはかなり安い。


『いらっしゃい。あんたこの街のものじゃないね。』


『ああ、旅のものでこの辺りに街がなくて困ってたんだ。』

『よそものに出す酒と飯はないよ。』


『なあに、取り引きがしたいんだ。』


『なんだよ?』


『あそこのシスターとお近づきになりたい。彼女とその周りの奴らに酒と飯をご馳走したくてね。』


すると、急にあたりは静寂に包まれた。


『あんた、目的はなんだい?』


店主はポケットに手を入れている。

あたりの客もこちらを警戒している。


ルーンが構えようとするのを、俺が止める。



『シスターとの色恋はご法度かな?あまりに飲みっぷりがいいのと、麗しい見目に吸い寄せられてしまってね。これは、失敬。』


立ち去ろうとする。



『ちょっとまちな。』



声の方を振り向く。


件のシスターだった。



『あんた、骨がありそうな男だな。まあ、みんな、争い事はこの街にとっても良くない事だよな。なあ、あんた酒代出してくれるんだろうな?』


『ああ、出すとも全員分。』


『何の為に?』


『いやね、こんな豪快で可憐なシスターならお近づきになりたいと思うのが、男の性だと思うが。』


『ふーん、にしては羽振りがいいね。後ろにいる女騎士さんじゃ飽き足らずかい?』


『こいつはただのボディーガードだ。』


シスターは俺とルーンをじろじろ見る。


『なんか、信用ならねえなあ・・・。』


『して、シスターは自らの魅力に気づいてないのかな?俺がシスターと同衾できるなら100回抱いても飽き足らぬぞ。そのくらいの価値があるのだが、、』




『なっ・・・・・。』



シスターの顔がみるみる紅潮する。

なんだか周りの男達もしみじみ頷いているのは気のせいだろうか。


『なれば、いかがかな?飲み比べで勝った男がシスターとの艶やかな一晩を買うというのは。いや、修道女にこんな破廉恥なお願いは、破門されてしまうかな?』



『くっ・・・ならば!私が、私の純潔の為に全ての男をつぶすまで!乗った!おおし、私を抱きたい男は全員エントリーだっ!』



あたりには男どもの咆哮が響き渡る。




さて、俺も下調べをしなかったわけではない。



貧民街と宗教都市の関係。

貧民街にお騒がせなシスターがいること。

なぜそこにいるのか。

そのシスターを取り巻く関係。


などなど、調査済みだ。




ボディーガードが女で良かった。

金、そして外見は魅力的な女性。


あとは口が軽そうな貧民街に精通している男。

ルーンがそういうくノ一的な働きが出来るのが意外だったが、助かった。





さて、あとは飲み比べに勝つだけだ。


『マサチカ、大丈夫なの?』


『ああ、こういうのはな、強いんだ。』












ちゅん、ちゅん。


『うー、頭痛い。』


ソフィーというシスターは酷い頭痛を感じ、

起きた。


一体何があったのだ。


確か、なんか怪しげな男に酒飲み勝負を挑まれたんだっけ。



ん・・・?



服がない。頭につけるベールもない。




『は、裸っ!』



『よう、ソフィーちゃん。』


ソフィーは青ざめた顔で、声の方を見る。





いたのは、タバコを咥えた、

半裸の例の怪しい男だった。

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