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ルーンとの時間




『ルーン、すまんな、今日も野宿で。』

『いいえ、私も騎士の端くれ。野宿上等です!』


俺らが村を出て3週間が経っていた。

村があった場所周辺にはこれといって人が

住んでいるような場所はかった。


1番近い都市も1ヶ月弱かかるような、

場所にあったらしい。



『村長はよくあんな最果ての地に村を作ったな。』


『全くですよね。』


そんな村をズタボロにしてしまったのは、

俺の不徳の致すところではある。



野営の準備をする。

近くの川でルーンは水浴びがてら魚と水をとりにいった。


俺は火起こし係である。

『ライターくらい、持ってくれば良かったな。』


詐欺師に火起こしは非常に難易度が高いのだ。

それでも、3週間の野営ですっかり慣れた。

慣れたとはいえ1時間近くかかる。


『人生はままならないな。』


さて火起こしは終わったし、ルーンのところへ行くか。



決してそういう男女関係ではない。


こうサバイバル生活も長いと、共にしている

女性の裸というのは見慣れたものになる。


羞恥心などなく、そういうものだと。

道中安全だったわけではない。

モンスターに襲われ、逃げ惑う中狭い洞穴で体を寄せ合い隠れたこともある。

山越えした時は凍死しないよう、お互い裸になり体を暖めたこともある。

数時間、木の上で水牛の大群をやり過ごす時も

当然生理現象は来るわけでそういう場を目撃せざるを得ない場面もあった。


リビドーなんてありゃしない。

生きるか死ぬか、その日常にエロスはない。



なので、何の気なしに水浴びをしているルーンに

声をかけた。



『マサチカ様、魚取れましたよっ!』


ルーンは嬉しそうだ。

久々のタンパク質に心は躍る。

水浴びしたままの格好でルーンは魚を仕留めたようだ。



『おお、大漁だな。塩焼きにするか。』


『はい、マサチカ様!』


ルーンは満面の笑みをこちらに向ける。

生まれたままの姿の美女が満面の笑みをこちらに向けるのだ。世の男性は羨むだろう。



普通は。



凍死しかけた俺を救ってくれた肌に、神々しさは感じるものの、リビドーは起きない。



『じゃあ俺も水浴びするか。今日は、砂漠を1つ抜けて砂まみれだ。』


服を脱ぎ、川に飛び込む。ふむ、極楽である。



『ルーン、明日には着けると思う。』

『いよいよなんですね。』


『ああでも、どっちが先がいいか迷うな。』


『宗教都市と貧民街ですよね。』


ここから西へ1キロ行くと、とある新興宗教が作り上げた宗教都市と、貧しさゆえに犯罪が蔓延る貧民街がある。



作りが立派なのは、宗教都市だ。


果たして流浪の女騎士と怪しげな詐欺師を迎えいれてくれるだろうか。





新興宗教団体を騙す、計略により落とす。




想像しただけで、

その妄想に対してならリビドーを感じる。





『マサチカ様、先戻って魚焼いてますね。』


『ああ・・・頼むよ。』













『ふう、食べた。食べた。』

久々に食したタンパク質ですっかり気力を取り戻すことができた。


『ルーン、俺は宗教都市にいこうと思う。』


『ええ、マサチカ様がそうおっしゃるなら。』


ルーンは丸太を枕に横になっている。

すこしぼんやりとしながら、火の揺らぎを見つめている。


俺は火をくべて、その揺らぎを見つめながら

しかし、一点だけを突き刺すように見る。





ルーンはあまり自分の意思がない。そういう生き方だったのだろう。元はいいところの育ちで全て親の意向により生きてきた。親が騎士団長ということもあり、騎士になり全て騎士団の意向のもと生きてきた。しかしながら、なぜ冒険者になったかまでは話をしてくれない。



そこに価値はあるのだろうに。

旅の終わりまでには聞き出さないとならない。



炎が消えゆくまで俺は揺らぎを見つめていた。





『アーニャちゃん・・・。』


寝言か。

ルーンの中でアーニャの存在は如何程だったか。




夜、涙を流しながらうなされていることもあった。




それでも、俺は慰めの言葉はかけたことがない。

そんな瑣末なものに支配される、時間は惜しいのだ。



なぜなら、俺は・・・。
















朝日が眩しい。

寝てしまったようだ。


『マサチカ様、朝ごはんできてますよ。』


『あ、ああ。』



昨夜の魚をすり潰して団子にしたものと塩で味付けしたスープ。


魚の出汁がよく出ていて美味い。


ルーンは、サバイバルセンスが抜群だ。

クレアとアーニャを失った中、不幸中の幸いだった。



ルーンがいなくては、あそこで俺のミッションは終わっていたはずだ。




食事を済ませて、野営を片付けた。

そして、宗教都市へと歩み出した。


すでに信仰がある都市の支配だ。非常に難易度は高い。しかし、プランはある。



まずは、宗教都市に入れるかどうか。


そこが鬼門なんだろう。


いざ、宗教都市へ。

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