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買収と焼き殺し

さて、ナーニャのかつての仲間はどうなったか。



宅配業務は筒がなく行われた。

その帰り道である。


『な、なあ報酬はどうするんだ?』

『あ?そんなの10:1で俺がもらうよ。』


リーダーの男はこう答えていた。

行動力があり、交渉ごともうまい。

だからこそパーティーが成立しているのは

火を見るよりも明らかである。


しかし、脇が甘い。ワンマン体制を敷いているが、所詮は金で繋がれた関係なのだ。それ以上の金を提示されれば、買収される。リーダーの失敗は、仲間は単なる傭兵でしかなかったことだ。




だから、こうなる。


『ふ、ふざけんな!俺が持ち歩いただろうが!少し分け前増やせよ!』


リーダーもまさか反抗するとは思わなかった。



『お前にはお灸を据えないといけないようだな。』




反抗した男はボコボコにされた。

見ぐるみを剥がされ、村より1キロくらいのところで捨てられた。


こういった裏切りに対する粛清は

徹底的にやるのが見せしめがつく。しかし、それは一つの共同体のみの話だ。この辺も脇が甘い。



ナーニャと俺はその様子を終始見ていた。


ナーニャは震えあがっている。


『なあ、ナーニャよ。あれは罪ではないのか?あんな奴が村にいるのはシスターとしてどう思う?』


歯をカチカチ言わせて震え上がるナーニャ。無理もない。片腕は粉砕骨折だ。眼球も片方はくり抜かれている。耳や目から流血がひどい。


ナーニャが恐れてるのは、その光景を見てではない。これから、あれと同じ苦痛を治療によって味わうからだ。


『シスター、大丈夫だ。薬草はある。やるんだ。』



『ひっ、ひっ!』



『やらないのか?』


俺は突き刺すような視線を送る。

『や、やります、やります!』


ナーニャは近づいて治癒魔法を発動させた。













教会の前に看板が立つ。


『本日、12時より臨時のお祈りを行います。奮ってご参加ください。』



信仰の力は強い。

ナーニャの説法を聞こうと村民は集まる。



『なあ、なんだろうなシスター様のお祈りって。』


『ああ、突然だよな。』





12時になる。


教会前の簡易的な壇上には、ボコボコにされたはずのナーニャの仲間が現れた。傷一つなく。



『あいつ誰だよ?』

『冒険者かー?』


村民は口々に話す。




そしてナーニャが現れた。





村民達はその姿を見る。


騒がしかった民衆は息を飲んだ。

言葉の凪が訪れる。


『・・・・・!!』




ナーニャの片目には眼帯。

片腕は包帯で肩から吊るされている。


傷だらけの生傷が惨状を物語る。



『な、ナーニャ様は、裏切りの冒険者に半殺しにされた俺を自分の体と引き換えに助けてくれたっ!俺はそんなあいつらを許せない。偉大なるシスター様を傷つけたあいつらに相応しい死を与えたいと思うっ!同調者はおらぬかっ!』



『や、やめよ。復讐は何も、、何も、、生まないのだ、、う、う、うわあああああ。』




猿芝居が繰り広げられる。


しかしながら、信仰は恐ろしいものだ。


民衆はたちまち暴徒と化した。



『殺せっ!ナーニャ様のために!』

『おいたわしゃ、ナーニャ様。ああ、仇討ちをしましょうぞ!』




そして最後に。



『あいつらは、村の貸し出し宿泊棟にいる!焼きつくすのだっ!』



貸し出し宿泊棟は、クレアの家が経営している。

今回は、俺が買い取ったので、その建物だけは別に燃やされようが何されようが反感を買うことはない。









『はあ、しかし楽な仕事だったな。』

『ああ、宅配にしてはいい報酬だったな。』

貸し出し宿泊棟では、酒盛りが行われていた。


リーダーは考える。

なぜやつは裏切った?黙っていれば、うまい蜜を吸い続けられるのに。まさかな、まさか。





ドドド。


窓の外から地響きがする。


『なんだっ!何が起きたっ!』


リーダーは窓に飛びつく。


そこには松明を持った村民が溢れ返る光景があった。







パリーン!


松明が投げ入れられる。


瞬く間に火が燃え上がる。



『うわ、うわああああっ!』

仲間の体が燃える。肉の焼ける匂いが充満する。


『み、水をかけろっ!』


パリーン、パリーン!!


次から次へと松明が投げ入れられる。間に合わない。





『に、逃げるぞっ!』

裏手に回ろうとするも、火の手が早く逃げられない。


『くそくそくそくそおおおお!』


焼けた天井が崩れ落ちる。

その天井はそのままリーダーへと覆い被さった。









さて、これでナーニャのパーティーは殲滅された。裏切りの男はどうなったか?



所詮奴も金で裏切らせた傭兵であり、

命を賭して私に仕える気はないだろう。


なので、クレアにゴブリンの巣に飛ばすように指示した。



ゴブリンにはどうやら、男色のゴブリンもいるようで、大変喜ばれた。



いよいよ村を乗っとる時が来た。

たかだか世襲の暗愚な村長だ。容易いだろう。


笑いが止まらない。

しかし一つ見落としがあるような気がする。



そしてその見落としで、凄惨な結末を迎えることになるのだった。

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