狂う魔法少女
「あの泥棒猫め。私の私のマサチカを、ああやって情で落とそうなんて、なんて浅ましい。」
クレアは怒りに打ち震えていた。
「私はマサチカのために、やりたくない転移魔法も
冒険者を虐殺するための交渉も、すべてマサチカのためにやってきたのに。」
クレアは自室に戻り、ナイフを取り出し枕をズタボロにする。
「何よ、マサチカのあの私に向けない優しい顔は・・・
私が何のためにこの手を汚して・・・・。」
クレアはこの村に育ち、宿屋の娘として大切に大切に育てられた。
かなりのワガママ娘であったが、両親がそんなクレアのすべてを肯定して育ててきた。そんなワガママな性格のせいか友達と呼べるような間柄の他人はいなかった。それどころか魔法能力が高いせいか、村民からは腫れ物にさわる対応をされた。
あいつを怒らせるな、音便に事を済ませろ、でないとあの娘は何をしでかすかわからない。
クレアもそれは頭ではわかっていた。だが、そんなクレアを認めてくれる因子たる両親がいれば、どんなに邪険にされていても認めてくれるほうになびき、脳内の快楽物質が出るのが人間の性である。
そんな折りに現れた白馬の王子様。私の魔法を認めて、そばにおいてくださる。
私のこの天才性を認めてくださる、偉大な男。
そんな男に捨てられてしまうかもしれないと思っている、
まあいわゆるヤンデレなのである・
「あの女さえいなければ・・・でもあの女を使役すると
マサチカはいった。だから表だって追放すれば、私が追い出されてしまう。」
社会経験が少ない少女にとってはいまいる世界がすべてである。
その世界からはじき出されてしまえばもう生きている意味なんてない。
青春期というのはそういう視界が狭くなりがちな時期でもある。
だからこそ、凶行にも及びやすい。倫理観を越えた先の
そのときの己の正義を貫くために。
クレアは一つの決心をした。
自分の心をつかんで離さない男にとって、一番の女に成るために。
「ふふふ・・・あはははははははははははははははははははは!私が!私が、マサチカのいちばんだからねええええええええええええええええ!!」
このもろい主従関係。こうなることすら、マサチカは想定しているものとも
知らずに少女は狂っていくことになるのだ。




