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6 お掃除

  聡利は昨日に続き琴音宅の玄関の前に立っていた。事前にこの時間に来てくれとのお達しがあったため、昨日みたいな躊躇らしきものは無い。

 チャイムを押そうとした時またドアが勢いよく開いた。

 


 どうしてこうもタイミングが良い(もしくは悪い)のだろう。二日続けてこのドアに額をぶつけるとは思わなかった。

 

「痛てぇ」

「あっごめん」

「・・・なにしてんの?」

「時間だから呼びに行こうかと」

「もしかして俺が来ないかと思った?」

「まぁ」

「俺から提案したんだ。バックれるわけないだろ」

「だってしょうがなくない?部屋の掃除なんて私にメリットはあっても聡利にメリットないよ」


 琴音の意見はごもっともだ。この汚部屋を掃除するとしたら軽く見積もっても丸一日はかかるだろう。

 それを数百円+αでできるのだからからかっていると思うのもおかしくない。

 

「俺の自己満足だから気にするな。あと沼も気に入って作りたくなったからな」

「ありがとう!」

「ていうか立ち話もあれだから入れてくれ」

「恋人でもない女の部屋に堂々と入れてくれ宣言ですか〜?」


 ニヤニヤと笑みを浮かべるこいつを馬鹿なのかと結構本気で思ってしまった。


「じゃあ帰るから片付け頑張れよ」

「待って待って!ごめん!もう言わないから!」



「・・・一応聞くが見られたくなかったり、貴重品とかは自室に持ち込んでるよな?」

「え?」

「え?って昨日いっただろう。なにかものなくなったとか、在らぬ疑いをかけられたくないんだよ」

「一応さとりんのことは信用してるんだけどなー」

「それでも、だ」

「はーい」



 琴音は危機感が欠如していると思う。出会って一ヶ月ちょっとの異性の自宅に我が物顔で入るわ堂々と自宅に招き入れるわで何かと心配になる。心配するだけだが。

 

 そんなことぼんやり考えていたらチャイムがなった。


「早かったな」

「よくよく考えてみたら最初から特に問題なかったから」

「あの部屋の有様には問題ありだがな」

「手伝ってくれるんだよね〜?」

「はいはい、手伝いますよー」


(なんかこいつと話すと和むんだよな)


 その事が聡利は疑問に思っていた。聡利にとってこういう陽の気質の人と関わりたいとも思わないからだ。

 こんな解決しそうにない疑問を浮かべながら、まるで自宅に入るように琴音の部屋に入った。


「おやおや~?ずいぶんナチュラルに入りますね~お兄さん」

「もう一回入ってるし。それとも、うわぁー緊張する!(裏声)って言ったほうがいいか?」

「キャラじゃないね!」

「そういうことだ。ってやっぱり汚いな」


 昨日も見た光景だがここが現役女子高生の住んで部屋とは到底思えない。なんだか初めて入った女性の部屋がこの部屋という事実になんだか悲しくなった。


「でも足場は作ったよ!」

「足場があるのが普通なんだよ!」


 過去一盛大な声でつっこんだ気がする。しかしこれはしょうがないことだと思う。得意な顔で当たり前以下のことを発言したのだから。


「まぁいいや。俺はリビングやるからお前は自室な。さすがにお前の部屋の掃除は出来ないから」

「・・・興奮するから?」


こいつはほんとに馬鹿だと思う。


「俺もう帰るからあとは頑張れよ!」

「ごめんごめん」

「はぁ〜。もういいから自室の掃除をやってくれ」

「はーい」

「雑誌とか捨てていいのとか分からないからさっさと終わらせてこっち手伝ってくれ」

「了解であります!」


(さてどこから手をつけようか。てかなんで床に服やら雑誌やらが落ちてるんだよ!)


 掃除といえば上から下が定石だがこの家の場合まず床をどうにかしないと移動もままならない。

 このマンションに住んでる人の事を考えると掃除機をかけることも考えると日中には終わらせたい。

 


「おーい!雑誌まとめたから確認してくれ!」


 あれから数時間がたってようやく床の全体が見えてきた。


「うん!ってもうこんなにやったの?」

「ああ。お前の部屋の方はどんな感じだ?」


 顔をそらされた。


「・・・部屋、見ていいか?」

「ダ、ダメです・・・」

「そういえば『見られて欲しくないもの片付けたか?』って聞いたあと『特に問題ない』って言ってたよな」

「・・・はい」

「じゃあどうしてだろうなぁ?まさかサボってたなんていわないよなぁ〜?俺はこんなに頑張っているのになぁ〜〜?」

「・・・サボッテマセン」


(図星だな)


 強引だとは自分でも思うが琴音を押しのけて部屋を見る。

 机の上には卒業アルバムがあった。


「お前ってしっかり枠の中に囚われることあるんだな」

「仕方ないじゃん!掃除中に卒アル出てきたら見るでしょ!普通!」

「・・・このままか、ここでひと踏ん張りするか選べ」

「頑張ります」




「やっと終わった」


 時刻は既に十八時を超えている。


「あんだけ散らかってたら・・・ね」

「それをお前が言うなよ」

「まぁまぁ。てか今から沼は無理だよ」

「・・・だな。さすがに疲れた」

「明日暇?」

「まぁ」

「じゃあ三時くらいにクレープ食べに行こうよ!そしてその後沼を」

「学校の人に見つかったら面倒そうだから前半の部分パス」

「じゃあこれなら?」


 琴音は帽子とメガネを取り出して徐に着用しだした。

 これで学校との印象はだいぶ変わった。


「これで行けるでしょ!」

「・・・バレても知らないフリしろよ」

「やった!」


 こうなったら止められないとここ二日でたっぷりと味わったので諦めた。

 そしてこれがデートということに聡利は気づいていなかった

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