4 めぐみ?
害虫駆除をした後も頭を抱えることになるとは思わなかった。
琴音を見ると安心しきっていて、このことを告げるのは精神的に苦しい。
「お前飯は?」
態度次第では恵んでやろうとも思う。しかし自分の勘違いだった場合、こいつのムカつく笑みが容易に想像できるので、一応確認してみる。
「まだ食べてないけど?」
未だに玄関の方にいてこの炊飯器の現状を知らないらしい琴音は不思議そうに疑問分で返してくる。
そして話は、聡利にとって面倒くさい方向に進む。
「はーん?さては私をご飯に誘おうとしてるな?」
「は?」
「でもごめんね。今日の晩御飯昨日あげた沼だし、お礼はまた今度するよ!」
「お礼は別にいらない」
「へ?じゃあ何で晩御飯のことを?」
当然の疑問である。だって彼女は炊飯器の現状を知らないのだから・・・。
「お前・・・とりあえず炊飯器見ろ」
「ん?どったの?」
「ギャーっ!!!」
「うっさ」
「どどどどうしよう、さとりん」
「呼び方、まぁ今はいいや」
「私、今からコンビニまで走るのやだよ!」
このマンションは学校からは近いがコンビニからは遠いため琴音の主張も分かる。
「ねぇさとりーん?もうご飯作った?」
語尾にハートマークが付きそうな甘い声で聡利に縋る。
もちろん面倒なので適当にあしらう。
「作った」
「えーでもー、さとりんの性格的に作ったらすぐ食べそうだよね?よく急いでるように見えるし。さっきお腹の虫が鳴いてるの聞こえちゃった!ってことはまだ食べてないよね?」
(無駄に察しがいいなこいつ!?)
琴音の言った通り作ったらすぐに食べるタイプなので琴音の指摘は正しかった。
態度次第と思ったが外堀から埋めていく所を見ると恵む気もなくなってくる。
「おっ!その顔は図星ですな!」
適当な言い訳を考えていたら先手を打たれた。
「はぁ〜。どうして欲しいんだ・・・」
(もういいや)
観念してこの先の展開を相手に任せることにした。その方が聡利的にも楽だと思った。
「私の分も作ってくれませんかね?」
「嫌だ」
前言撤回、言い方と妙な笑顔を浮かべているので作る気が失せた。
「なんでよ!!!一人も二人もぶっちゃけ変わらないでしょ!!!」
ぶっちゃけその通りだがそれを作られる側が言うのは違うと思う。
「見返りは?」
「へ?」
「見返りは何を用意出来る?」
「沼?」
「じゃあ俺はこれで」
「待って待って!駅前のクレープ!!!駅前のクレープは?」
「それプラス沼のレシピで手を打とう」
結局こうなるのかと苦笑いをしてしまう。
そしてこの時聡利は、失言したことに気づいていなかった。