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古き英雄の新たな物語【リメイク】  作者: 光影
第四章 戻って来た日常
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沈んだ心

 首を横に傾け、誰かからのメッセージを受信した通信機を手に取り操作する。


『影様へ


 昨日、杏奈から女王陛下と私に報告がありました。影様が魔術原書としてこれからは戦場に立ち戦うと。一度は失った立場とは別の立場でこれからは私達に力を貸して頂けると。世界に七人しかいない人類の希望と呼ばれる魔術原書としてこれから影様がご活躍されると思うと正直嬉しい気持ちになります……。


……中略。


 なのですが、女王陛下が「何で私の所にはあのバカ来ないの!?」と言って昨日からご機嫌が最悪に悪いので、もしよかったら一回顔を見せにこちらに来てはいただけませんか?

 なんでも、つい嬉しさのあまりか杏奈が口を滑らせてしまったらしく、この三年間私達と密かに連絡を取っていた事が女王陛下にとうとうバレてしまい私達ではどうする事も……。ですからもし良ければ助けて欲しいです。物心つく前からずっと一緒に育った影様に会えばきっと女王陛下の機嫌も良くなるはずです」


 メッセージを読んだ影は苦笑いになる。

 今までは言い訳として、もう軍には戻れないと周りに言ってきたが女王陛下に会えばその言い訳はもう使えない。本当は薄々感づいていた。優美を影の元に派遣した時点で女王陛下は影の事を許している。そして、遠回りながら接触を試みていたことぐらい。これでもかつては女王陛下の右腕として内政面でも活躍していたし、ずっと一緒にいた峰岸遥みねぎしはるか――女王陛下の性格はこれでもかと言うぐらいに知っているつもりである。


 本当は怖かっただけである。

 ……女王陛下から何かを言われることが。

 世間が思っている程、影は決して強くない。

 だけど、そんなことを言っても誰も信じてくれない事は目に見えている。


 ため息を吐いて、どうするか考える。

 正直に言うと、気まずさのあまり会いたくない気持ちはあった――が、可愛い元部下達が困っている。

 となると、やはり会うしかないような気持ちにもさせられた。

「ん~。どうするかな~」

 誰も居ないリビングで一人呟く。

「どうしたの?」

「う~ん。女王陛下が俺に会いたいんだって……」

「会わないの?」

「う~ん。何か色々と昔合って会うのが気まずいって言うか、会いたくないと言うか……。でもプライベートでは世間には隠しているけど仲が良かったから久しぶりに会いたい気持ちもある……んっ?」

 影の言葉が途中で止まる。

 今、この家には影一人しかいない。


 ……。

 …………。


 と、なると影は今誰に向かって話していたのだろうか……。

 通信機を見ても通話中にはなっていない。


 もしや幻聴を相手に話していたのか……。

 それとも沈んだ心が自分に語りかけてきたのか……。


 ――どちらにしろ、色々な意味で末期まっきだなと思う影。


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