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古き英雄の新たな物語【リメイク】  作者: 光影
第一章 歌う総隊長
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優莉との再会


 気づけば影と優美は杏奈から送られてきた歌詞を見ながら歌の世界に入り込んでいた。優莉の歌声は影と優美の心に優しく響いてきた。時間にして四~五分前後の曲だったが二人が余韻に浸る。優莉の歌は何処か力強くも聞いていてテンションが上がった。影はこの歌を知っていた。感情がたかぶり心が揺れ動くこの歌を確かに知っていた。


 ――だが、この時、ここにいた誰もが思いもしなかった。

 ――この歌詞が現実となる日が来ることを……


「懐かしい歌だ」

「いい歌だね」

 歌い終わった優莉が影と優美の存在に気づいたらしく、丘の上から腰下まである薄紫色の髪を揺らして、手を振りながら走ってくる。

「影様~お久しぶりで~す」

 その声に反応して、影が走ってくる優莉に向かって微笑む。

 影が小さく手を振ると優莉が笑顔になる。

「優美さん悪いけど後で優美さん事を優莉様に紹介するからちょっと静かにしててね」

「わかりました」

 微笑む杏奈の言葉に優美が影の一歩後ろに下がりながら返事をする。

 そして、誰にも聞こえないように小声で。

「やっぱり思った通りだ、優莉様後で私に感謝してくださいね」

 と杏奈が呟く。

 そのまま杏奈も後ろに下がり優美と一緒に影の後ろまで移動する。

 すると、すぐに優莉が息を切らして影の元に来る。

「久しぶりだね。元気にしてた?」

 乱れた息を整える為、優莉が一回大きく深呼吸をする。

「はい。こうしてお会いするのは三年振りですね!」

 優莉は笑顔で影の顔を見る。三年振りに見た優莉は一段と大人びており、影は目を疑ったがその美貌こそが優莉の持ち味だと納得する。美しいバラには棘があるように優莉は総隊長である。オルメス軍のNo,1であり全権代理者つまり国のNo,2でもある。下手な事を言えばどうなるかは言うまでもなかった。だが、そんな凄い人物だろうと影はいつもの影のままだった。

「そうだね。相変わらず歌が上手で三年前より磨きがかかってるね」

「ありがとうございます」

「そうだ。いつか、あげようと思いつつも機会がなくて今まであげられなかったんだけど、これあげるよ」

 影はそう言って、魔晶石が入っているポケットとは逆側のポケットから優莉へのプレゼントを取り出す。影の手にある物を見て優莉が首を傾げる。

「指輪ですか?」

 優莉が勘違いしているのか、顔を赤くして照れてしまう。そんな優莉を見て、影はすぐに指輪の説明をする。ここで誤解を招いては大変な事になる、と直感が教えてくれた。

「うん。これは魔晶の音指輪と言って、優莉の声に魔力を乗せて周囲に影響を与える事が出来る特別な指輪だよ。簡単に言うと、補助魔法強化アイテムって感じかな。後は声に魔力を乗せて誰かに魔力を渡す事も可能だけどね」

 理解力が高いのか優莉はすぐに影の言いたい事を理解してくれたが、表情はさっきと変わり嬉しくも少し期待外れと言った感じだった。

「つまり今まで以上に私の声を媒体に魔力を周囲に放出したり、誰かに渡す事、後は周囲に影響を与えることが可能な補助魔法強化アイテムですか?」

「そうだよ。本当は三年前に渡すつもりだったんだけどね……ほら、まぁ三年前は色々とね……あったからすっかり忘れててね……あはははは」

 最後は笑って誤魔化す影を見て、優莉がクスクス笑う。

「影様は昔から何一つ相変わらずですね」

「まぁね」

「本日は私との結婚を前提としたお付き合いの申し込み。つまりこの指輪は口下手な影様による告白と受け取っていいのですか?」

 冗談を言う……満更冗談にも聞こえなくもない声のトーンに影が慌てる。

「まって、まって、まって。優莉落ち着いて。仮にそうだったらこんな誰かの前ではしないから。するなら二人きりの時で……って違う! そうじゃなくて、あっち!」

 影が杏奈と優美の方に向かって指を向ける。

 必死な影を見て、優莉が嬉しそうに笑う。

「冗談ですよ。影様にそんな根性がないことぐらいずっと前から知ってますから」

 馬鹿にされた影はどんな反応をしていいか困った。からかわれただけだと知った瞬間、男の尊厳と言うかプライドと言うか威厳と言うか……何かよくわからないがそんな目に見えない何かが傷つけられた気しかしなかった。

「ふふっ。可愛い」

 影が咳ばらいをする。

「優莉?」

「冗談ですよ。それで、今日はどういったご用件ですか?」

「ある女の子が優莉に挨拶したいって言ったから、俺が杏奈に相談したら会わせてくれるって言ってくれてね。急でごめんね」

「そうだったんですね」

 影をからかって満足したのかニコニコしながら優莉が杏奈と隣にいる優美を見る。


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