【漫才】なろうになろう5
二人「はいどーもー! 『ナローになろう』でーす!」
ボケ「知ってるか? 交差点でトラックに轢かれたら異世界に転生できてチートもらって無双できるらしいぜ?」
ツッコミ「お前と出会って15年。今日ほど意味が分からんと思ったことはないぞ?」
ボケ「え? 分からないの? なら仕方ない、説明してやるよ。」
ツッコミ「へっ、恩にきるぜ。」
ボケ「構わんよ。俺とお前の仲だろ? で、何が分からないんだ?」
ツッコミ「まずはな、異世界って何? 言語的にここではないどこかだってことは分かる。そりゃあ分かるよ。でもな? ここまで文明が発展した現代において並行世界多元理論や多重展開量子的宇宙理論を無視していきなり異世界って言われても頭が追いつかないのも事実じゃん? だからその辺りをハーバードを飛び級で卒業した俺でも分かるように学術的に説明してみてくんない?」
ボケ「…………異世界ってのはな……俺みたいな中卒ニートが……唯一の希望として夢に夢見る新たな世界観のことなんだ……」
ツッコミ「待て待て、いくらお前がボケだからって言っていいことと悪いことがあるぜ?」
ボケ「何だよ……俺はまだ何もボケてねぇよ……」
ツッコミ「いや、ボケてるだろ。中卒ニートだって? そんなクソ以下の人間が現代日本にいるはずないだろ? ボケ過ぎるのは笑えないぜ?」
ボケ「いや……いるんだよ。そんな現実を超越したクソ以下のカス人間が……」
ツッコミ「おいおーい。嘘つくなってー。もしもそんな奴がいるとするならだよ? どうやって生きてるってんだよ? 住居に食事、生活費。どうやって払ってるってのさ?」
ボケ「親だ……親が負担してるんだ……」
ツッコミ「いやいやいや、おかしいだろ! 18歳をすぎたら欧米では大人だぜ? そんな奴を家に住まわせて、その上食事まで用意する? そんな王様みたいな生活ができるってのかい日本では!?」
ボケ「あ、ああ……できるんだ……親は一人っ子に甘く、どこまでも甘やかされた子供は再現なく親の脛をかじる……その結果、妄想と現実の区別がつかなくなった子供は自分の学歴を……ハーバードだなんて言い出すんだ……」
ツッコミ「そりゃ重症だな。学歴をハーバードだと偽る? 許せない奴もいるものだね。僕の母校ハーバードはそこらのクソニートが卒業できるほどヌルくはないよ?」
ボケ「そ、そうだな。ハーバードはヌルくないもんな……ところでさ、お前の卒業証書を見せてくれないか? 俺のダチはハーバード卒だって自慢したいからさ。」
ツッコミ「卒業証書? あー、悪い。実家に置いてある。また今度でいいか?」
ボケ「お前実家暮らしだろうが……昨日だっておばさんの肉じゃがは超うまいって言ってたよな?」
ツッコミ「だから昨日引っ越したんだよ。ニューヨークの5番街に。」
ボケ「……ふーん……そうかよ。ところでお前の卒論って何だった? バカな俺に分かるように教えてくれよ?」
ツッコミ「はぁ? 卒論? お前ごときに分かるようにって、無茶言うなよ。そもそも俺の選考は量子力学だぞ? 超ひも理論を基礎としたアルティメットエクストリームヘブンフラッシュ理論に関する一考察を説明するだけで一晩はかかるぞ? それでも聞きたいか?」
ボケ「お、おお……聞かせてくれるんなら……」
ツッコミ「ようし分かった。きっちり説明してやるからな。それからどうやったら異世界に行けるかも教えてやるよ。」
ボケ「えっ!? マジで!? 異世界に行けんの? ならもう説明なんかいらないし! 行かせてくれよ!」
ツッコミ「いいぜ? ならあそこの交差点に立ってみな。」
ボケ「こんな感じか?」
ツッコミ「そうそう。そして手を後ろに組んで顔は上を向く。」
ボケ「こうだな?」
ツッコミ「そうだ。いいぜぇ。後は待つだけだ。トラックが来るのをな……今だ!」
ボケ「ぐちゃっ」
ツッコミ「よし、死んだな。全くボケのくせに俺の学歴を疑いやがって。俺は間違いなくハーバード大学を卒業したっての。ただし肘川市公民館のハーバード大学研究講座だがな。」
二人「人生は細くダーク。『ナローになろう』でした。