2話
それは4時間目が始まる少し前。次の国語の授業が始まる前に教科書やらノートを用意して授業に臨む体勢を整え先生が来るのを待っていた時だった。
隣の橘が鞄の中をガサゴソと探し、机の中もガサゴソ。チラッと見るとノートはあるっぽいので教科書を探しているのか。珍しいな、いつもは忘れ物なんかしてるのを見た事ないし、宿題だって完璧にやってくるのに……。まぁ、偶にあるよな何時もならやらないポカをしちゃう時て。
しかし、橘はどうするのか。このままでは教科書がない状態で授業が始まってしまう。
選択肢としては他のクラスの誰かに教科書を借りる。だが橘に他のクラスの人間で教科書を貸してくれる様な知り合いとか友達いるのか?同じクラスにも親しい奴なんかいないのに。ましてや、もうすぐ授業が始まる。今から貸してくれる人間を探していたら間に合わない筈だ。授業に遅れたら評価点減点、それは完璧超人な橘にとっては避けたい所だろう。さぁ、どうするんだ。
橘は一通り探し終えると軽く溜息をついた。そして諦めたのか先生を待つ姿勢へと変わる。
そうか、まぁ、仕様がないわな。教科書の本文読みが当たらないのを祈るしかない。
……………いや、てか、俺が教科書見せてあげればいいんでね?隣なんだし……。
……うーーーん。あんま話した事ない人に話しかけるのって結構ハードル高いんだよなぁ……。もし万が一話しかけて、は?みたいな顔されたり、断られたりしたら俺の豆腐のメンタル潰れる自信がある……。でもなぁ〜、見ちゃったしなぁ〜。流石に見て見ぬ振りてのも俺のなけなしの良心の呵責が……………ええい、ままよ!どうにでもなれ!!
気が付けば俺は話しかけていた。
「あのぉー、橘さん?も、もし良かったら俺の教科書一緒に見ます?」
普段話さない人に話しかける緊張で若干吃ってしまった。
突然俺に話しかけられて橘は最初目を見開いていたが、少し間を置くと
「ええ、ありがとう。助かるわ」と作り笑いをして返してきた。
良かったぁぁ、俺の豆腐潰れずに済んだぁ…。
「あ、いえ全然。えっとどうしよう」と始めて会話が成立して俺がアタフタしていると、橘は自分の机を自らくっつけてきた。やべえ、机並べると案外近えな。
近くのクラスの連中がどうしたのかとチラチラと好奇の視線を向けてきて落ち着かない。平静を装っているが結構ツライ。早く授業終わってくんないかな。まだ、始まってすらいないけど……。
タイミングよく教師が教室に入ってきて授業が始まる。授業が始まれば俺と橘は終始無言。
しかし、授業中偶にチラチラ視線が来る。特に和泉からの視線が多かった。
なんだよ、なんもありゃしないよ………。早く授業終わんないかなぁ……
授業は特に何もなくいつも通りに終わった。
俺が終わったぁ〜と軽く伸びをしていると、隣から「ありがとう。助かったわ。このお礼はその内」とそそくさと机を戻し教室から出て行ってしまった。
俺は突然の事にええ、ああとしか言えず、礼とかいらないんだけどなぁと思いつつも言いそびれた事から
まぁ、いっかと放置した。
4時間目が終わり、昼食の時間になったので弁当を広げているとさっきやたらとこちらをチラチラと見ていた和泉が話し掛けてきた。
「えっと、影山君。さっき橘さんと机並べて授業受けてたよね?何があったんだい?」
そんなくだらない質問に対し他の野次馬の様にクラスメイトがコソッと聞き耳を立てているのが何となく分かった。
いや、普通授業で机並べてたらどっちかがなんかしら忘れ物したとか思いつかんのか、と当たり前のツッコミを抑え、「いや、橘さんが教科書忘れたっぽかったから見せてただけ。それだけ」と答えた。
「そ、そっか教科書見せてただけなのか。そうだよな、普通!ごめんごめん。何でもない。じゃ!」そう言うと女子がたむろしている自分の席に戻っていった。
まじこういうのやめて欲しいわ。何でもかんでも男女が絡むと恋愛とか何やらに結びつけようとするの そうゆうの良くないと思うな!
まぁ、それは置いといて橘が言ってたお礼て何だろ
ジャンルをコメディとしていますが、自分でこれがコメディなのか自問自答してます笑